IT業界25年の軌跡:NVIDIAでの新たな挑戦 私は1996年に大学を卒業し、財閥系の国内企業に就職しました。大学ではIT全般を学び、第2次AIブームと第3次AIブームの間の「冬の時代」にも人工知能に関する授業を受けました。最初は物流企業に入り、荷主である米系大手IT企業と仕事をする中で、IT業界に興味を持つようになりました。 2000年、ミレニアムのタイミングでIT業界に転職し、そこから外資系IT企業でのキャリアが始まりました。現在まで約25年間、数社で経験を積み、今はNVIDIAに勤務しています。 以前はPC関連企業で製品マーケティングを担当しており、その頃からNVIDIAとは深い関係がありました。ディープラーニングの進化を目の当たりにし、再びNVIDIAと関わる機会があると感じていました。そして約6年前、実際にNVIDIAに入社しました。 お客様の成功を支える:25年のITキャリアとデジタル変革 私は2000年から約25年間、エンタープライズIT企業に携わってきました。主に日本の企業のお客様のIT化やデジタル変革を支援してきました。私のキャリアは法人営業と法人マーケティングの両方を経験しており、ハイブリッド型の役割を果たしてきました。 営業では、ITインフラや端末の導入を通じてお客様のデジタル変革を直接支援してきました。これが一つの大きな実績だと思っています。 マーケティングでは、成功事例や課題解決のプロセスをメッセージやストーリーにして広く伝えることで、お客様のデジタル変革を間接的に支援してきました。特に、同業他社の成功事例をベンチマークとして紹介し、それを通じて他のお客様にも導入を促進することに力を入れてきました。 15年ほど前は、企業内での情報公開に対するハードルが高く、PR活動が難しい時代でしたが、お客様と協力して少しずつストーリー化し、広く伝えることに成功しました。これにより、日本の企業がデジタル変革に取り組むきっかけを作り、多くのお客様に新しいITアプローチを導入していただくことができました。 マーケティングストーリーで切り拓く:IT業界の新たなアプローチ 私のチャレンジは、お客様に直接アプローチする機会を増やすことでした。社内の営業チームやアカウントチームから「難しい」と言われることが多かったため、できるだけ直接お客様と話す機会を作るよう努めました。 成功例を社内に示し、マーケティングチームに任せてもらうことで、「ドアオープンだけしてもらえれば、あとはマーケティングストーリーを作り、発信するところまでマーケティングチームとお客様で直接やる」という形で進めてきました。一つ一つの事例や広告だけでなく、多くの事例を集めてセッションとして見てもらうことが重要です。 昨年11月に開催したAI Summitでは、50を超えるセッションを行いましたが、日頃からお客様と直接話をしていないと、セッションに登壇してもらうことは難しいです。常にチームと協力し、きめ細やかに対応することで、大きな機会をうまく乗り越えることができたと感じています。 ジェンスン・フアンに学ぶ、成功するための二つの秘訣 私が受けたアドバイスの中で特に印象に残っているものが二つあります。 一つ目は、NVIDIAの創業者/CEOであるジェンスン・フアンがよく言う「Be A Perpetual Learning Machine」という言葉です。「Perpetual(パーペチュアル)」は「恒久的な」という意味で、「常に学び続けろ」というメッセージです。 ジェンスン自身も経営者でありながら、最新の情報やテクノロジーについて非常に詳しく、常に勉強しています。マーケティングにおいても、お客様の課題や解決策をわかりやすく伝えるためには、自分自身がしっかりと勉強することが重要だと感じています。最近では、一般社団法人日本ディープラーニング協会のG検定などをマーケティングチームのメンバーそれぞれが取得しようとしています。 もう一つは「Feedback is a gift」という言葉です。 フィードバックを贈り物として受け取るという考え方です。立場が上になるほど、フィードバックをもらう機会が減る傾向がありますが、直属の上司から「フィードバックを素直に聞けることも能力の一つであり、それを贈り物として受け取り、自分の成長に繋げるべきだ」と言われました。良いことも悪いことも含めて、フィードバックを贈り物として受け止めることが大切だと改めて感じました。 より具体的なマーケティングにおける仕事観、やりがいや魅力に焦点を当て、リーダーシップやITリーダーへの効果的なアドバイスなど、堀内氏に話を聞きました。詳細については、こちらのビデオをご覧ください。 マーケティングのやりがい、マーケッターとしての魅力について: 現職では法人マーケティングを担当していますが、お客様の変化を共に見守り、サポートしながら、その成功をストーリー化して世に出すことがマーケティングの醍醐味だと感じています。 マーケティングの目的は、こうした成功事例を広めることで次のビジネスに繋げることです。ビジネスへの貢献がマーケティングの最も重要なミッションだと思います。市場を活性化し、新しい技術を取り入れるハードルを下げることで、私たちのビジネスも成長していくことができます。これがマーケティングの最大の魅力だと考えています。 リーダーシップに関して、成功するマネジメント層に必要なことは何ですか? チームの規模やメンバーの多様性が重要視される時代ですが、私の考えでは、ダイバーシティは当たり前のことです。若い人からベテランまで、男性も女性も、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが集まるチームで、それぞれの強みを活かし、一つの大きなマシーンとして機能させることがリーダーの重要な役割だと思います。 特にマーケティングチームでは、エンジニア出身のメンバーや新卒でマーケティングを学んできたメンバーなど、多様な経験を持つ人々が集まります。それぞれが自分の得意分野にフォーカスしがちですが、個人商店の集まりにならないように、一人一人の力を結集して「パワーハウス」として機能させることが大切です。 日々のチームワークや一つの力に昇華させる努力が、AI Summitのような大きなプロジェクトで効果を発揮します。まだ道半ばですが、これを意識して取り組んでいます。 ITリーダーやマーケッターを目指す人たちにどのようなアドバイスをしますか? いろんなバックグラウンドを持つ人が多い中で、キャリアの若いうちにセールス活動に携わることが、マーケティングの理解を深める上で重要だと感じています。理由はいくつかありますが、まずビジネスが成立するプロセスを知ることが大切です。お客様が注文書を出し、営業がそれを受け取るという行為は簡単ではなく、双方の大きな努力が必要です。このプロセスを理解せずにマーケティングを行うのは難しいと思います。 また、若いうちに大きなプロジェクトや困難な経験を積むことも重要です。そうした経験は、自分の判断力を養い、将来の大きなプロジェクトに対処する際の基盤となります。失敗から学び、立ち上がる力も身につけることができます。 さらに、マーケティングにおいては、お客様のバックグラウンドを理解することが重要です。特に日本でデジタル変革を推進するには、エンジニア以外の層に対しても適切な情報を発信することが求められます。自分自身の知識と経験を活かし、勉強を続けることが大切です。 マーケティングは目先の数値やメトリクスに目が行きがちですが、一歩引いて、自分にとって何が必要かを分析し、勉強することが重要です。テクノロジーやデジタルマーケティングのツールは多くありますが、お客様の求めるものを理解し、しっかりと勉強することが大切です。 今後の展望、中長期的な取り組みについて: NVIDIAのマーケティングが果たすべき役割の一つとして、日本における「ソブリンAI」の発展があります。これは、日本独自のAIをどのように発展させるかという大きな課題であり、私たちはその実現に向けて取り組んでいます。 特に、国が直接サポートしている企業だけでなく、これからAIやディープラーニングを活用しようとする多くのお客様に対して、私たちのマーケティングチームが課題解決の道筋をわかりやすく発信し続けることが重要です。難解なテクノロジーをお客様自身のツールとして使っていただけるようにサポートします。 また、NVIDIAが単なるGPUの会社ではなく、関連するハードウェアやソフトウェア、マイクロサービスなどを総合的に提供するプラットフォームメーカーであることを理解してもらうことも重要です。これが私たちの課題であり、ステップです。 「ソブリンAI」はまだバズワードのように感じるお客様もいますが、日本独自のAIを発展させることでリードできる分野は多くあります。NVIDIAとしても、災害予測や予知検知などのAIの活用モデルを日本に取り入れるために多くのことができると考えています。 さらに、日本の製造業、特にメカトロニクスやロボティクスの分野でのAI活用も重要です。日本がリードできる分野を結びつけ、NVIDIAがそのサポートをすることで、これらの分野を加速させることができます。
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