スマートフォンの先駆者でGeneral Magicの創立者兼CEOであるマーク・ポラット氏は、スタンフォード大学在学中の1976年に執筆した卒論で、未来は情報機械や情報労働者、情報企業によって定義されると正確に予言しました。
今日、私たちは「情報社会」に生き、「情報経済」の中で働いているというのが一般的な認識です。驚くべきことに、現代人が持つ情報量の多さにもかかわらず、例えば1日に35億件の検索が行われているているにもかかわらず、情報を使って価値を創造するための具体的な戦略の特定に窮しているのです。
情報管理について真剣に取り組む時がきています。情報技術ではなく、情報管理にです。技術=進歩ではありません。情報から価値を生み出すことこそが進歩なのです。
エグゼクティブブリーフィングや年間レポートは、「注目の新技術にこれだけの予算を費やしている」という類似事実であふれています。サブスクリプションリサーチ会社によって数字は異なりますが、世界はいま情報技術に多額の支出をしており、いわば4兆6000億ドル支出しています。分析会社のDeep Analysisは、インテリジェントドキュメント処理の400以上のベンダー市場のみでも2026年末までには40億ドルに成長する可能性があると推測しています。
しかし、情報発信が事実上無料のグーテンベルク後(ソーシャルメディア)経済時代に入った今、情報を発信する機械やシステムにかかるコストに目を向けることをやめ、代わりに情報から価値(および意味)を生み出す経済に目を向けるべきではないでしょうか。主要な意思決定者が必要な情報を得るためにどれだけのコストをかけているかを実際に把握している人はいるのでしょうか。
情報戦略を構築する時機到来
2、3年おきに、粗雑な情報管理によっていかに容易に価値が損なわれるかを思い知らされます。最近の例では、21歳の「サイバートランスポートシステムのジャーニーマン」、ジャック・テイシェイラの事件です。彼はケープコッド共同基地内のオーティス空軍州兵基地に本部を置く第102情報航空団に配属されていましました。テイシェラは、国防機密情報を意図的に保持・送信し、機密国家情報をビデオゲーム仲間と共有したとして起訴されました。
この事件は、政府の機密情報管理プロセスの正当性全体に疑問を投じました。これは政府だけで起きていることではありません。
企業部門においては、情報管理の不備によって破壊された価値は、罰金や訴訟の和解金の支払額で計測されることがよくあります。このような大惨事が明るみに出る前に、上場企業はしっかりと情報管理をしているかどうかを判断するためにどのような指標を使っているでしょうか。また使うべきでしょうか。P&Gとユニリーバ、コカ・コーラとペプシ、GMとフォード、マクドナルドとチポトレ、マリオットとヒルトン、どちらの企業がより効率的に情報管理をしているのでしょうか。就職希望者を面談する際に、その候補者が情報管理のスキルを持ち、責任ある行動を取ることができる人かどうかをどのように確認すればよいのでしょうか。
経営史の専門家によると、世紀の変わり目の10年ほど前、それまで普遍的に「良いもの」と思われていた「情報」が、問題視され始めるようになりました。パソコンの発明からおよそ20年後、一般の人たちは日々生成される情報量に圧倒されるようになりました。私たちは情報によって栄え、情報に依存していますが、情報に雁字搦めにされることもあります。1人の人間が処理できる以上の情報があふれかえっています。
情報ナラティブはとても前向きなものから、情報を「止められない蒸気ローラー」や「川、しかもとても汚染された川」として描く暗い比喩や例えへと変わってしまいました。
フューチャリストの資金集めパーティで出会った仲間で、現在ニューヨーク大学の副学長を努めているニューメディア教授のクレイ・シャーキー氏は、「これは情報過多ではなく、フィルタリングの失敗だ」と名言を残しました。これは情報戦略に疑問を投じるものです。あなたは利用できる情報リソースから価値を創造する戦略を個人的にお持ちでしょうか。貴社はどうでしょうか。
情報を利用して価値を創造
私たちは皆、情報科学者です。私たちは i.schoolの学位は持っているわけでも、情報管理にフォーカスを当てたAssociation for Intelligent Information ManagementやARMAなどの業界団体や職能団体のメンバーであるわけではありませんが、私たち一人一人が情報を生成し、整理し、管理し、保管し、検索し、使用しているのです。
経済界の中には、情報戦略についてじっくり考えている人もいます。1994年4月12日、アリゾナの弁護士であるローレンス・キャンターとマーサ・シーゲル夫妻は、6000以上のUsenetニュースグループに迷惑メールを送り、史上初の大量スパム行為に乗り出しました。彼らは10万ドル以上の収益を生み出しながら、ほとんど全く経費が掛からない情報戦略を使っていたのです。私はこの情報戦略を容認しているのではありません。情報から価値を生み出したければ、それには戦略が必要だということを認めているだけです。
情報戦略では、いくつかの根本的な課題に対処しなければなりません。例えば、不必要な情報によって限られた注意力が圧倒されるのをどのように防ぐか、いかにして個人情報や機密情報が公になるのをどのように防ぐか、などといったことです。
効果的な情報管理戦略の構築から得られるものは多大なのです。