CIO30 Awards Japan 2025 受賞者インタビュー(審査員特別賞)
審査員特別賞(チーム):ダイハツ工業株式会社
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審査員特別賞(個人): J.フロント リテイリング株式会社
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世界トップクラスのAI技術を誇るアリババクラウドは、独自の大規模言語モデル「Qwen」を軸に、AI最適化インフラやグローバル規模のコミュニティを提供。オープンソースでの柔軟な利用や、GPUリソースとAIソリューションの一体提供により、企業のAI活用を強力にサポートします。日本市場でのパートナー連携を強化し、CxO層やエンジニアとの共創を通じて新たな価値創出を目指しています。
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Enterprise agentic AI is rapidly moving from assistive to autonomous. Large language models are now wrapped in agents that can route customer claims, draft contracts, trigger payments, change configurations, or decide which alerts deserve human attention—or the attention of another agent. Today, 13% of major enterprises globally are substantially on this path, with more than ten agentic workflows…
ビジネスで世界モデルを語るとき、まず必要なのは翻訳だ。世界モデルという言葉は、ロボティクスや強化学習の文脈では「環境のダイナミクスを学び、行動の結果を予測できる内部表現」を指す。しかし経営や事業の現場で重要なのは、物理世界の力学よりも、人や市場の振る舞いがどう変化するかである。つまりビジネスにおける世界モデルは、「需要、供給、在庫、価格、広告、顧客体験、競合、季節性、ルール変更」といった要因が絡み合う世界を、ある程度の因果として捉え、介入したときの結果を見積もるための内部モデル、と言い換えられる。
ここで強調したいのは、世界モデルは単なる予測モデルと違う、という点だ。売上予測や需要予測は多くの企業で行われている。過去のデータから未来の数値を当てることは、統計モデルでも機械学習でもできる。だが世界モデルが目指すのは、「もし施策Aを打ったらどうなるか」「施策Bならどうか」という反事実の比較であり、意思決定に直結する問いに答えることだ。未来を当てるだけでは意思決定は変わりにくい。なぜなら、未来は当てても変えられないが、施策は変えられるからだ。世界モデルは、予測を“介入可能な形”に変換することを狙う。
ただし、ここで誤解が起きやすい。世界モデルを導入すれば、経営が自動操縦になる、という期待だ。現実には、世界モデルは意思決定を置き換えるというより、意思決定の質と速度を上げる補助輪になりやすい。しかも、万能な補助輪ではない。ビジネスの世界は、外部要因が多く、観測できない変数も多い。顧客の心理、競合の内部事情、規制の動き、社会トレンドなど、モデルに入れづらいものが結果を大きく動かす。だからビジネスの世界モデルは、物理の世界モデルよりも「不確実性を抱えた仮説生成装置」として設計すべきだ。
翻訳の最後のポイントは、世界モデルを“会社の意思決定プロセス”に埋め込む視点だ。世界モデルが生む価値は、モデルが賢いことそのものより、「会議で何を議論するか」「施策をどう比較するか」「失敗をどう学びに変えるか」というプロセスを変えるところに出やすい。世界モデルがあると、議論は「売上が上がると思う」から、「この介入を入れたときの分岐はこうで、リスクはここで、最悪ケースはこう」という形に寄っていく。意思決定が、空気と声の大きさから、仮説と検証へ寄っていく。その変化自体が、ビジネスにおける世界モデルの価値になる。
ビジネスで世界モデルが効く場面には共通点がある。それは、介入が明確で、結果が比較的短い時間で観測でき、データが一定量取れる領域だ。逆に、介入が曖昧で、結果が何年も後に出て、データが薄い領域では、世界モデルは強い武器になりにくい。つまり「世界モデルを作ること」より先に「世界モデルが効く問いを選ぶこと」が重要になる。
分かりやすい使いどころはマーケティングだ。広告費をどのチャネルにどれだけ配分したら、どのセグメントの購買がどう変わるか。キャンペーンの条件を変えたら、獲得単価やLTVがどう動くか。ここで必要なのは、単なる予測ではなく、施策による因果の差分だ。世界モデルがうまく機能すれば、「予算を増やせば売上が増える」ではなく、「どの範囲では増えるが、どこからは飽和し、別のチャネルへ回したほうが良い」といった、より具体的で実装可能な提案に近づける。
サプライチェーンや在庫運用も、世界モデルの価値が出やすい。需要の変動、リードタイム、欠品、廃棄、物流制約が絡む世界は、静的な最適化では追いつきにくい。ここで世界モデルがあると、「発注量をこう変えたら欠品リスクがどう変わるか」「配送ルートの制約が変わったら在庫はどこで詰まるか」といった、動的なシミュレーションが可能になる。特に、現場では小さな遅れが連鎖して大きな損失になることがあるので、未来の分岐を早期に見つけられることが効く。
動的価格付けやレベニューマネジメントも、介入がはっきりしていて結果が観測しやすい領域だ。価格を上げれば利益率は上がるかもしれないが、需要が落ちるかもしれない。競合が追随するかもしれない。ここで世界モデル的な発想は、「価格という介入が需要にどう伝播し、在庫と顧客体験にどう影響するか」を一つの動的システムとして扱うことにつながる。ただし、この領域は倫理や規制とも絡むため、モデルの最適化目標をどこに置くかが非常に重要になる。短期利益に偏ったモデルは、長期の信頼を壊す。世界モデルが賢いほど、逆に危険にもなり得る。
一方で、世界モデルが効きにくい領域もある。ブランド形成や組織文化、長期の研究開発など、因果が長く遅れて現れ、観測が難しいものだ。ここで世界モデルを作ろうとすると、観測できる短期指標に最適化が寄り、長期価値を損なう危険がある。つまり、モデルが扱える世界に現実を合わせてしまう誘惑が生まれる。ビジネスで世界モデルを使うとき、最も怖い失敗は「測れるものだけを価値だと思い込む」ことだ。
だから、世界モデルの使いどころは二層に分けて考えるのが現実的だ。短期で結果が見える領域では、世界モデルを施策探索のエンジンとして使う。長期で曖昧な領域では、世界モデルを“意思決定の補助資料”として扱い、最終判断は別の原理も含めて行う。この使い分けをしないと、世界モデルが強力になればなるほど、組織は誤った最適化に引っ張られる。
ビジネスに世界モデルを入れるとき、技術より先に壁になるのはデータだ。世界モデルは観測から学ぶので、観測できない変数が多いと精度も因果も不安定になる。典型はオフラインデータの限界で、過去に実行した施策の範囲でしか学べないことが多い。過去に割引をほとんどしていなければ、割引の効果を学ぶのは難しい。過去に在庫を極端に絞ったことがなければ、欠品の影響を推定するのは難しい。つまり、世界モデルを作りたいなら、ある程度は「学習のための介入」を計画的に行う必要がある。これはA/Bテストや実験設計の話に接続するが、世界モデルはここをサボると急に弱くなる。
次の壁は責任だ。世界モデルが「この施策が良い」と言ったとして、その施策で損失が出たら誰が責任を持つのか。これを曖昧にすると、モデルは採用されないか、あるいは都合の良いときだけ使われる。現場でよく起きるのは、成功したら「AIのおかげ」、失敗したら「AIが悪い」というねじれだ。これを避けるには、世界モデルを“提案者”として位置づけ、最終決定は人間が行うのか、あるいは一定範囲で自動実行するのかを明確にする必要がある。そして自動実行するなら、どの範囲で、どんなガードレールを置くのかが不可欠になる。世界モデルの導入は、権限設計の導入でもある。
三つ目の壁は説明だ。ビジネスでは、意思決定がステークホルダーに説明できなければ通らない。世界モデルは内部表現を圧縮しがちで、なぜその結論になったのかが見えにくい。ここで必要になるのは、世界モデルを“説明可能にする”というより、“説明可能な形で使う”工夫だ。たとえば、世界モデルの予測を単一の数字で出すのではなく、条件を変えたときにどの方向にどう変わるか、リスクの幅はどれくらいか、どの前提が効いているかを示す。いわば、結果ではなく感度を見せる。世界モデルの本質が分岐と介入にあるなら、説明もまた「何が効いているか」を示す方向へ寄せるのが自然だ。
そして最後に、世界モデルの導入は運用で決まる。市場は変わるし、競合も動く。モデルは劣化する。だから、モデルがいつ怪しくなったかを検知し、更新し、更新したら退行がないかをテストする仕組みが必要になる。これを作らずに世界モデルだけを持ち込むと、最初はうまくいっても、半年後に静かに壊れる。実務での世界モデルは、モデル単体ではなく、データ収集、実験、監視、ガードレール、説明のセットとして初めて成立する。
結局、世界モデルがビジネスに効くかどうかは、「作れるか」より「使い方を設計できるか」で決まる。介入が明確で、結果が観測でき、データが取れる領域から始め、反事実の比較で意思決定を改善する。モデルの提案に権限を与えすぎず、ガードレールと責任分界を設け、説明は感度と分岐で行う。そうやって初めて、世界モデルは“賢い予測”から“賢い意思決定”へ企業を押し上げる。世界モデルは経営を自動化する魔法ではないが、経営の議論を実験とシミュレーションへ近づける現実的な武器にはなり得る。そこにこそ、生成AI時代の次の競争軸がある。
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人は外界をそのまま写し取っている、という感覚で日々を過ごしている。目の前の机は机だし、信号は赤だし、相手の声は相手の声に聞こえる。けれど認知科学や神経科学の一部の流れでは、知覚を「入力を受け取る装置」ではなく「入力を当てにいく装置」として捉える。世界は情報量が多すぎるので、脳は受動的に処理するよりも、先に予測を立てて、外から来た情報で誤差を修正するほうが効率が良い。これが予測符号化(predictive coding)と呼ばれる考え方の核にある直感だ。
予測符号化の話が魅力的なのは、知覚の不思議を“説明の形”に持っていけるからだ。たとえば錯視は、外界の刺激が同じでも、見え方が変わる現象だ。もし知覚が単なる入力の写しなら、錯視は起きにくいはずだが、実際には頻繁に起きる。予測が強すぎると、脳は入力を予測に引っ張って解釈し、現実とずれた“見え”を作る。逆に、予測が弱いと、ノイズを拾いすぎて安定した知覚が崩れる。つまり、知覚は予測と誤差修正のバランスで成り立っている、という見立てになる。
この枠組みで言う「予測」は、単に未来の出来事を言い当てる占いのようなものではない。もっと日常的で、身体に密着している。たとえば会話では、相手が何を言いそうかを予測しているから、ノイズがあっても意味を補完できる。歩行では、足を出したら地面があるはずだと予測しているから、身体は滑らかに動ける。もし毎回、足を出してから地面を確認していたら、まともに歩けない。予測があるからこそ、私たちは世界を“連続した一つの場”として経験できる。
ここで世界モデルという言葉に接続すると、脳内の予測の土台にあるのは「世界はだいたいこう動く」という内部表現だ。物は落ちる、硬いものはぶつかれば跳ね返る、人は視線の先を気にする、言葉には文法がある。こうした規則性をまとめたものが、脳にとっての世界モデルのように働く。もちろん、脳が「世界モデル」というラベルのファイルを保存しているわけではない。しかし、予測を立てるための内部構造がある、という意味では世界モデル的だと言える。
ただし、ここで重要な注意点がある。予測符号化が魅力的な説明だからといって、「脳は世界を正しく理解している」には直結しない。むしろ逆で、予測は知覚を歪める可能性も含んでいる。人は信じたいものを見たり、慣れたパターンに当てはめたりする。世界モデルが強いほど、現実がそれに合わないときに、誤差を無視する方向へ行くことがある。世界モデルは賢さの源であると同時に、偏りの源にもなる。この両義性こそが、脳を世界モデルとして語るときのリアリティだ。
脳が世界モデルを持つかどうかを考えるとき、知覚だけでなく行動や学習まで一緒に見ると、話がぐっと面白くなる。なぜなら、世界モデルがあるというのは「未来を予測できる」だけでなく、「未来を変える手段を選べる」ことを含むからだ。予測は行動のためにある。行動がなければ、予測は単なる空想で終わる。
行動を選ぶという視点から見ると、脳は常に反事実を扱っているように見える。反事実とは「もしこうしたらどうなるか」という仮の未来だ。ドアを押すか引くか迷うとき、私たちは頭の中で一瞬試している。道を渡るか待つか判断するとき、車の速度と自分の歩行速度の関係を、厳密な数式ではなく感覚でシミュレーションしている。こうした内部シミュレーションは、世界モデルがあると考えると自然に説明できる。世界の動き方を内部に持っているから、行動の結果を事前に見積もれる。
学習もこの枠組みに入る。世界モデルがあるなら、学習とは世界モデルの更新だ。予測が外れたとき、脳は誤差を感じ、次から外れにくいように内部表現を調整する。これは単純な連合学習としても説明できるが、世界モデルという観点では「状態を推定し、遷移を学ぶ」プロセスとして捉えられる。ここでの状態は、外から見える刺激だけではない。相手の意図、場の空気、自分の体調といった、直接観測しづらい要因も含まれる。人間が社会的に賢いのは、見えない状態を推定し、それを使って未来を読むからだという見方もできる。
記憶もまた、世界モデルと結びつく。私たちは過去の出来事を、ビデオのようにそのまま保存しているわけではない。記憶はしばしば再構成され、文脈に合わせて変形する。それを欠陥と見るか、機能と見るかで評価は分かれるが、世界モデルの観点では機能に見えてくる。つまり、記憶は単なる保存ではなく、「次の予測に役立つ形での圧縮」なのかもしれない。細部の忠実さよりも、因果の骨格を残すほうが、次の行動選択に役立つ場面は多い。
ここまでの話はAIにも似ている。AIの世界モデルも、観測を潜在状態に圧縮し、次の状態を予測し、目的に沿って行動を計画する。脳とAIの違いは、脳があまりにも多様な目的を同時に持っている点だ。食べる、逃げる、仲良くする、学ぶ、休む。しかも身体は疲れるし、感情は揺れる。だから脳の世界モデルは、単一のタスクに最適化された工学モデルよりも、曖昧で柔軟なものにならざるを得ない。ここが人間らしさの源であり、同時に、人間が非合理にも見える理由にもなる。
さらに、脳には身体性がある。世界モデルは脳内だけで完結せず、体の制約や感覚と密接に結びつく。空間を理解するとき、私たちは視覚だけでなく、姿勢や触覚の感覚を統合している。行動は世界を変え、その結果が再び感覚として戻ってくる。このループを回し続けることで、世界モデルは鍛えられる。だから「脳は世界モデルを持つか」という問いは、実は「脳と身体のシステムは世界モデル的に働くか」と言い換えたほうが正確かもしれない。
世界モデルを賢さの鍵として語るなら、同じくらい大事なのは「世界モデルが壊れると何が起きるか」だ。壊れると言っても、物理的に破損するわけではない。予測が偏る、更新が止まる、誤差の扱いが歪む。こうした状態が起きると、人の振る舞いは驚くほど変わる。そしてそれは、AIが見せる弱点と不気味なくらい似た形を取ることがある。
たとえば、思い込みが強い状態を考える。人は一度「こうに違いない」と信じると、その信念に合う情報だけを取り込み、合わない情報を無視したり軽く見たりしやすい。これは世界モデルの更新が偏る状態と見なせる。予測誤差を素直に受け取ってモデルを修正するのではなく、誤差を「例外」として処理してしまう。結果として世界モデルは頑固になり、外界とのズレが大きくなる。それでも本人の中では整合が取れているので、ますます確信が強まる。これは、人間が時に陰謀論や誤信念にはまる仕組みの一部としても語られるし、日常の小さな誤解にも当てはまる。
別の例として、強いストレスや疲労の状態では、長期の見通しが立てづらくなることがある。未来を想像する余裕がなくなり、目先の反応に寄る。世界モデルで言えば、予測の地平が短くなり、内部シミュレーションが粗くなる状態だ。これは合理性の低下に見えるが、危機状況では短期反応が生存に有利なこともある。つまり、世界モデルの“性能”は状況と目的に依存する。人間の世界モデルは、常に最適ではなく、環境に合わせてモードを切り替えるように働く。
そして、ここがAIとの比較で面白いところだが、AIもまた「もっともらしいが外界に合わない」出力をすることがある。言語モデルのハルシネーションは分かりやすい例で、内部の整合性に従って文章を生成するが、現実の事実や因果と一致しないことがある。これを「嘘をついた」と道徳的に捉えるより、「世界モデルの拘束が弱い場所で、もっともらしさが勝った」と構造的に捉えるほうが理解が進む。人間が思い込みで現実をねじ曲げて解釈するのと、似た形が見えるからだ。
さらに、分布外で壊れるというAIの弱点も、人間の世界モデルと重ねて理解できる。人は未知の文化や未経験の状況に出会うと、既存の枠組みで解釈しようとして誤解することがある。異文化コミュニケーションで起きるすれ違いは、世界モデルの不一致と言える。AIが学習データにない状況で誤るのも同様で、既存のパターンで埋めようとしてしまう。違いは、人間は経験の中で世界モデルを更新し続けるのに対し、AIは更新の仕組みを明示的に設計しないと固定化しやすい点だ。ここに、将来のAIに求められる方向性が見える。世界モデルを持つなら、世界モデルを更新し続ける仕組みが必要になる。
結局、「脳は世界モデルを持っているのか」という問いに対して、答えは一言ではない。脳が工学的な意味で明示的な世界モデルを実装していると断言するのは難しい。一方で、予測を軸に知覚・学習・行動がつながり、内部表現が未来の見積もりに使われているという意味では、脳は世界モデル的に働いていると言える。そして何より重要なのは、世界モデルは正しさだけで測れないということだ。予測は知覚を助けるが、同時に偏りも生む。更新は学習を生むが、同時に思い込みも生む。この両義性を受け入れたとき、世界モデルは単なるAIの流行語ではなく、「知能とは何か」を考えるための強力なレンズになる。脳を理解するために世界モデルを使い、世界モデルを実装するために脳から学ぶ。その往復運動こそが、生成AI時代の“予測する心”を現実のものにしていく。
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