일문일답 | 200년 전통 기업에 AI를 심다··· 인터내셔널 로버트 오 CDIO의 혁신 문화 구축법

일리노이주에 본사를 둔 인터내셔널 모터스(International Motors)는 전통 제조기업이 공통적으로 겪는 과제에 직면해 있다. 200년간 회사를 지탱해 온 운영 체계를 유지하면서 AI 역량을 통합하는 일이다. 두산그룹 부사장을 비롯해 다양한 기업과 산업에서 기술 부문 리더를 역임한 로버트 오(오명환) CDIO는 핵심 축에 기반한 디지털 전략과 부서 간 협업을 위한 ‘공동 혁신 랩’을 창설해 해법을 모색하고 있다. 현재 인터내셔널에서…

データドリブン経営の進化と日本の活路―世界の潮流から読む戦略的課題

かつて「21世紀の石油」と称されたデータは、今やその比喩が実態を捉えきれないほど巨大な奔流となり、あらゆる企業活動を飲み込んでいます。本稿は、この「データの洪水」時代におけるデータドリブン経営の現在地を、技術の進化、世界の主要経済圏(欧州・米国・中国)の戦略、そして日本が直面する課題という三つの視点から多角的に分析します。

欧州が「デジタル主権」を掲げ公共性の高いデータ共有基盤を構築し、米国が市場原理のもとでプラットフォーマー主導のエコシステムを拡大させ、中国が国家戦略としてデータとAIを社会システムに組み込む中、日本は「文化」「制度」「実装力」という三重の壁に直面していると言われます。

データはなぜ「資源」から「経営基盤」になったのか

企業のデータ活用は、1990年代のERP(統合基幹業務システム)導入による基幹データの一元化に端を発し、2000年代のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの普及によって過去データの可視化とKPI管理という形で定着しました。この段階では、データは主に「報告」のためのものであり、その流れはバッチ処理を前提とした断続的なものだったのです。

決定的な転換点は、2010年代以降のクラウドコンピューティングの大規模普及でした。データの保存・処理・配信コストが劇的に低下したことで、データ活用の主軸は「蓄積・報告中心」から「連続・即応中心」へとシフトしました。IoTが物理世界の出来事をリアルタイムデータに変換し、機械学習や生成AIが「過去の可視化」から「未来の予測・新たなコンテンツの生成」へと分析の射程を拡大したのです。

この結果、データは精製施設に運び込まれる原油のような「資源」ではなく、常に流れ込み、経営のあらゆる意思決定の前提となる「インフラ」へとその性質を変えました。現代の経営とは、この奔流をいかに制御し、価値に変えるかという「治水」の技術体系そのものとなりつつあります。

世界のデータ戦略:三極化するアプローチとその狙い

データの戦略的重要性が増す中、欧州・米国・中国はそれぞれ異なる思想に基づき、社会規模でのデータ活用基盤の構築を進めています。

欧州:「デジタル主権」と共有基盤の構築

欧州連合(EU)は、「ガイアエックス(Gaia-X)」に象徴される、産業横断でデータを安全に共有・再利用するための基盤構築を推進しています。これは単なる技術的な相互接続ではなく、データ主権を確保し、特定企業のプラットフォームへの過度な依存を避けるという強い政治的意志の表れです。

この思想は制度面にも反映されています。2019年のオープンデータ指令に続き、2024年1月に発効し、2025年9月から段階的に適用が開始される「データ法(Data Act)」は、IoT製品から生じるデータへのアクセス権をユーザーや第三者に与えるなど、データ流通のルールを定めています。

製薬業界での国境を越えた臨床試験データ共有や、エネルギー分野での再生可能エネルギー発電データの融通による需給調整など、「産業別データスペース」の構築が具体的に進んでおり、欧州の次なる競争力の源泉として期待されています。

米国:「市場原理」とプラットフォーマーのエコシステム

米国では、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudといったクラウド事業者が強固なエコシステムを築き、データ基盤とAI機能を自社サービスに深く統合する流れが加速しています。これにより、企業は高度な分析・AI機能を迅速に導入できる一方、事業者間のデータ移行の難しさ、いわゆる「ベンダーロックイン」への懸念も根強く存在します。

医療分野では、電子カルテ大手EpicとMicrosoftが協業し、生成AIを診療支援や文書作成に組み込む実装が2023年から進んでいます。小売業界では、大手チェーンが生成AIをコールセンター業務に導入し、顧客対応の自動化と効率化を実現する事例が広がっています。市場のダイナミズムがイノベーションを牽引する構図です。

中国:「国家戦略」と社会実装のスピード

中国は、国家主導でデータ活用を推進するトップダウンのアプローチを特徴とします。都市レベルで交通・行政・産業のデータを統合した基盤を整備し、AIを公共サービスの基盤に据える「スマートシティ」構想が各地で進められています。

規制面でも、2023年8月には生成AIサービス提供者向けの暫定規則を施行し、国家の価値観に沿った利用と安全性の確保を義務付ける枠組みを迅速に整えました。制度、産業政策、そして社会実装が一体となって動くスピードは突出しており、国家戦略の中にデータ活用を明確に位置づけています。

日本が直面する三重の壁と処方箋

世界の潮流に対し、日本は「文化」「制度」「実装力」という根深い三つの壁に直面していると言われています。

文化の壁:「経験と勘」から「データによる意思決定」へ

経済産業省のDX白書や各種調査が示すように、「意思決定においてデータを日常的に用いている」と回答する日本企業の比率は、欧米に比べ依然として低い傾向にあります。重要な会議の場で、客観的なデータよりも一部のベテラン社員の経験や勘が優先される光景は、多くの企業で今なお見られるかもしれません。これは単なる習慣の問題ではなく、データに基づいた議論の作法や、失敗を許容し仮説検証を繰り返す組織文化が未成熟であることに起因します。

制度の壁:リスク回避から「信頼を基盤とした活用」へ

2022年4月施行の改正個人情報保護法は、越境データ移転に関する本人への情報提供義務や漏えい報告の厳格化を定めました。こうした規制はデータの適正な利用を促すために不可欠ですが、企業のリスク感度の高まりと相まって、現場では「データを動かすこと」自体への過度な萎縮につながりやすい側面もあります。法規制を遵守しつつ、プライバシー保護技術(PETs: Privacy Enhancing Technologies)などを活用し、データを安全に利活用する「ガバナンス・バイ・デザイン」の発想への転換が求められるでしょう。

実装力の壁:投資規模と人材育成の遅れ

データ基盤やAIへの投資規模、そしてそれを担う専門人材の厚みにおいて、日本は欧米のトップ企業から大きく水をあけられているのが現状です。国内でも大手金融機関や製薬会社による先進事例は存在しますが、産業界全体への広がりは限定的です。中堅・中小企業においてもIoTデータの活用事例は散見されるものの、「実証実験(PoC)」の段階を抜け出し、全社的な業務プロセスに組み込まれているケースはまだ少ないようです。データサイエンティストやデータエンジニアといった専門職の育成とキャリアパスの整備は、事業スピードに直結する重要な課題と言えるでしょう。

日本企業は「データの洪水」をいかに乗りこなし、価値に変えるか

データ活用の現場では、技術が進化する一方で、新たなリスク管理が求められるという両面作戦が常態化しています。クラウドデータウェアハウス(CDW)や、両者の長所を併せ持つデータレイクハウスは、サイロ化されたデータを統合し、高度な分析を行うための土台として標準的なアーキテクチャとなりました。

特に2023年以降、生成AIの実用化が大きな変革をもたらしています。社内文書や業務システムのログデータを大規模言語モデル(LLM)と連携させ、高度な検索、要約、文章生成を行う仕組みは、研究開発から営業、人事、コールセンターまで、幅広い部門の生産性向上に貢献するポテンシャルを秘めています。しかし、生成AIは同時に新たな課題も突きつけます。誤った情報を生成する「ハルシネーション」、機密情報の意図せぬ漏洩、学習データに含まれる著作権の問題、そしてアウトプットの品質管理など、対処すべきリスクは多岐にわたります。国内の大手銀行による実証実験報告でも、「業務効率化は実感できたが、回答精度を担保し、利用ルールを策定する難しさが壁となった」と指摘されているように、技術の導入とガバナンス体制の構築は不可分です。

データドリブン経営は一過性の流行語ではなく、企業、ひいては社会の競争力を規定する基盤そのものです。欧州は公共性の高い「装置」を、米国は市場の「推進力」を、中国は国家の「戦略」をそれぞれ軸に据え、データという巨大な流れを制御しようと試みています。

日本は文化・制度・実装力という遅れを抱える一方、大企業から地方自治体、中堅企業に至るまで、多様な活用の萌芽が広がり始めた段階にあります。規制は利用の信頼性を高め、技術は活用のハードルを下げます。この二つの力の緊張関係の中で、企業は絶え間なく流れ込むデータを意思決定と業務の「前提」へと昇華させていくことが望ましいでしょう。

もはや、より多くのデータを集める「樽」を増やすことに大きな意味はないのかもしれません。今こそ、この奔流を乗りこなすための堅牢な「堤防」を築き、価値を汲み出すための高度な「水門」を設計する時と言えるでしょう。


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生成AIが揺るがす著作権、世界の動向は?

AIが描く未来は、創造性の楽園か、それとも無法地帯か。クリエイターの権利を根底から揺さぶる生成AIの登場に、世界の法制度は悲鳴を上げている。各国の思惑が交錯する著作権の最前線を追う生成AIの爆発的な普及は、社会に生産性の向上という大きな恩恵をもたらす一方、著作権という知的財産制度の根幹を揺るがす、これまでにない問いを投げかけています。大規模言語モデル(LLM)や画像生成AIは、インターネット上の膨大なテキストや画像を学習し、人間が作成したものと見紛うほどのコンテンツを瞬時に生み出します。

このプロセスで、既存の著作物はどのように扱われるべきなのでしょうか。そして、AIが生み出した成果物に「著作権」は認められるのでしょうか。この二つの難題に対して、米国、欧州連合(EU)、日本、中国をはじめとする世界各国の対応は異なり、国際的に統一されたルールはまだ存在しません。本稿では、各国で進む法整備や訴訟の最前線を追い、生成AI時代における著作権の「現在地」を深く掘り下げ、その未来を展望します。

生成AIが揺るがす著作権の二大論点

そもそも従来の著作権法は、人間が思想や感情を創作的に表現した「著作物」を保護する、という大前提の上に成り立ってきました。そこでは「人間の精神的な活動」の介在が不可欠とされ、機械が自動生成したものは保護の対象外でした。しかし、生成AIの登場はこの前提そのものを揺るがしています。

現在の議論で重視されている点は、大きく二つのポイントに分けることができます。一つは、AIが膨大なデータを学習する「インプット段階」における著作権問題。もう一つは、AIがコンテンツを生成する「アウトプット段階」での著作権問題です。前者は、AI開発企業が既存の著作物を許諾なく学習データに利用する行為が、著作権侵害(特に複製権や翻案権の侵害)に該当するのではないか、という論点です。後者は、AIが生成したテキストや画像、音楽などに著作権は認められるのか、そして認められる場合に誰に権利が帰属するのか、という論点です。

この二つの論点は、技術革新を推し進めたい産業界と、自らの権利や生活を守りたいクリエイター側との主張が真正面からぶつかる領域であり、各国の法制度や文化的な背景の違いを色濃く映し出しています。歴史を紐解けば、15世紀の活版印刷が「複製」という概念を生んで著作権制度の基礎を築き、20世紀末のインターネットがデジタルコピーの是非を問うたように、大きな技術的転換は常に著作権制度の再定義を促してきました。生成AIは、現代における最大の転換点として、著作権のあり方そのものを問い直しているのです。

米国――フェアユースをめぐる攻防と司法判断の行方

生成AIと著作権をめぐる議論の最前線は、間違いなく米国です。巨大テック企業と活発なスタートアップ文化が共存するこの国では、「フェアユース(公正な利用)」という法理を軸に、激しい法廷闘争が繰り広げられています。フェアユースとは、批評や研究、報道、教育といった目的のために、著作権者の許諾なく著作物を利用できるとする、米国著作権法に定められた柔軟な例外規定のことです。

AI開発企業はこのフェアユースを盾に、著作物の大規模な学習利用は、元の作品とは異なる目的や性格を持つ「変換的利用(transformative use)」であり、著作物の市場価値を損なわないため適法だと主張しています。この主張の拠り所となっているのが、かつてGoogleが数百万冊の書籍をスキャンした「Google Books訴訟」の判例です。この裁判では、書籍を検索可能にするという新たな価値を生み出す行為が変換的利用と認められ、フェアユースが成立しました。

現在進行中のストックフォト大手Getty Imagesによる画像生成AI「Stable Diffusion」開発元の提訴や、作家団体によるOpenAIやMetaを相手取った集団訴訟など、注目される多くの裁判で、この判例が重要な論拠として再び持ち出されています。これに対し権利者側は、AIの学習は大規模な無断複製に他ならず、クリエイターの市場を破壊する行為だと強く反発しており、司法の判断に世界の注目が集まっています。

一方、アウトプット段階、すなわちAI生成物の著作権に関して、米国は比較的明確な姿勢を示しています。それは「人間の創作的な関与」を絶対的な要件とする立場です。2022年、米著作権局は、人間からの指示なくAIが自律的に生成した画像の著作権登録を拒否しました。

さらに、人間がプロンプトを入力して生成した画像を含むコミック『Zarya of the Dawn』の事例では、物語の構成やキャラクターの配置といった人間が創作した部分の著作権は認めつつ、AIが生成した画像そのものの著作権は否定するという「分割判断」を下しました。この方針は、2023年の連邦裁判所判決(Thaler v. Perlmutter事件)でも支持され、「著作権法の根幹には人間の創作性がある」という原則が改めて確認されています。

判例法を重んじる米国では、今後もこうした司法判断を積み重ねる中で、フェアユースの適用範囲や「人間の関与」の具体的な線引きが形作られていくでしょう。その動向は、国際的なルール形成にも決定的な影響を与えるはずです。

欧州連合(EU)――権利者保護を徹底する包括的規制

米国が司法判断と市場原理に解決を委ねる側面が強いのとは対照的に、EUは「権利者保護」と「規制」を基軸とした、全く異なるアプローチを取っています。EUの戦略を象徴するのが、2019年に成立した「デジタル単一市場における著作権指令(DSM指令)」と、世界に先駆けてAIへの包括的な規制を導入した「AI Act」です。

DSM指令には、テキスト・データマイニング(TDM)に関する例外規定が設けられています。これにより、大学といった非営利の研究機関は自由に著作物を学習データとして利用できますが、営利目的のAI開発事業者の場合は、著作権者が機械で読み取り可能な形で利用拒否の意思(オプトアウト)を示していない限りにおいて、学習利用が認められます。これは、AI開発の自由を広く許容する米国や日本とは異なり、権利者の意思を優先するという明確な姿勢の表れです。

さらに、2024年8月から段階的に施行されるAI Actは、AI開発企業に厳しい透明性の確保を義務付けます。特に、汎用AIモデルの開発者は、学習に使用したデータの概要を公開しなければなりません。この規定によって、権利者は自らの作品が無断で学習に利用されたかどうかを確認する手がかりを得られます。加えて、AIが生成したコンテンツには、AIによる生成物であることを明示するラベル付けも求められます。

こうしたEUの厳格な規制の背景には、出版業界や音楽業界など、影響力の強い文化産業からの働きかけがあります。彼らは、許諾のないAIの学習がクリエイターの創作意欲を削ぎ、文化市場そのものを破壊しかねない、と強く警鐘を鳴らしてきました。EUの規制は、その域内だけでなくEU市場で事業を展開する世界中の企業に適用されるため、「ブリュッセル効果」によって事実上の国際標準(デファクトスタンダード)となる可能性を秘めています。権利者保護を重視するEUの動きは、自由な開発を志向する米国との間で、今後のルール形成における主導権争いへと発展することも予想されます。

日本――世界でも特異な「学習天国」とその課題

米欧の動向の中で、日本は極めてユニークな立ち位置にあります。2018年に改正された著作権法30条の4は、「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」である限り、原則として著作権者の許諾なく著作物を利用できると定めています。

この規定はAI開発における情報解析を念頭に置いたもので、非営利・営利の目的を問わず、権利者側が拒否するオプトアウトの仕組みもないことから、世界で最もAI開発者に有利な法制度だと評価されています。それは、いわばAIの「学習天国」とも呼べる状況です。この法改正は、データを活用したイノベーションの創出を国策として進める「知的財産推進計画」の一環で、日本のAI産業の国際競争力を高める狙いがありました。

しかし、生成AIの急速な普及は、この「緩やかな」制度に対する懸念を国内のクリエイター団体から噴出させました。漫画家、イラストレーター、音楽家などからは、自らの作品が意図せずAIの学習データに使われ、作風を模倣した質の低いコンテンツが大量に生み出されることへの強い不安や怒りの声が上がっています。

こうした事態を受け、文化庁は有識者会議を立ち上げ、権利者保護とAI開発のバランスをめぐる議論を重ねていますが、産業界とクリエイター側の意見の隔たりは大きく、議論は難航しているのが実情です。他方、アウトプット(生成物)の著作権については、米国と同じく「人間の創作的関与」が必要との解釈が一般的ですが、どの程度の関与があれば著作物と認められるのか、具体的な基準や判例はまだありません。AIが生成した画像がコンテストに応募されるといった事例も現れる中、法的な空白が広がっています。

産業振興を優先し「学習の自由」を広く認めた日本独自のモデルは、国際的なルール調和を求める圧力が高まるにつれて、権利者への配慮を組み込む形での見直しを迫られる可能性も否定できません。

中国・その他各国の多様なアプローチと国際協調の模索

米・EU・日本が三者三様の道を歩む一方、他の国々も独自の対応を模索しています。中でも中国は、国家による強力な統制を前提とした規制モデルを構築しています。2023年に施行された「生成型人工知能サービス管理暫定弁法」は、AIサービスの提供者に対し、学習データの合法性を確保する義務を課すと同時に、生成コンテンツが「社会主義の核心的価値観」に沿うことを求めています。

これは著作権保護という側面以上に、国家による情報統制の手段としての性格が色濃い規制です。ただし司法の現場では、2023年に北京インターネット法院が、人間の知的貢献が認められればAI生成画像も著作物として保護され得ると判断するなど、限定的に権利を認める動きも見られます。

その他の国に目を向けると、英国は営利目的でのTDM例外規定の拡大を検討しましたが、クリエイター団体の猛反発を受け撤回しました。韓国は日本に近い情報解析目的の例外導入を議論中で、インドやオーストラリア、カナダなども専門家会議を設けて国内議論を進めている段階です。このように各国の制度設計は多様化しており、統一ルールの実現に向けた道のりは依然として遠いと言えます。

こうした中で、国際的なルール調和の役割を期待されているのが、世界知的所有権機関(WIPO)やUNESCO、G7、OECDといった国際機関です。WIPOでは専門家会合が重ねられていますが、各国の利害が鋭く対立し、具体的な条約や統一見解の策定には至っていません。一方で、G7広島AIプロセスでは開発者向けの行動規範が策定されるなど、リスク軽減を目指す国際協力は少しずつ前進しています。

いずれにせよ、生成AIは著作権制度に対し、その誕生以来の根本的な見直しを迫っていると言えるでしょう。学習データの利用はどこまで許容されるのか。AIが生成した成果物に創作性は宿るのか。これらの問いに、唯一絶対の正解はまだありません。

しかし、著作権制度が本来、創作者の権利を守ることを通じて文化全体の発展を促すものである、という原点に立ち返れば、目指すべき方向性が見えてくるはずです。それは、技術革新がもたらす恩恵を社会全体で享受しながら、人間のクリエイターが正当に報われ、安心して新たな創作活動に打ち込める環境をいかにして築くか、という点に尽きます。

人間とAIが共創する新しい時代にふさわしい、公正で持続可能な著作権のあり方を、国際社会が一体となって知恵を絞り、模索していくことが今、まさに求められているのです。


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