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イノベーションは良い土壌からしか生まれない——データ基盤と人財育成で加速するJFRのIT改革(後編)

ホールディングスだからこそ見える 事業横断のシナジーを最大化するデータ活用法 

——CIOという仕事のやりがいについてどのようにお考えですか? 

JFRにおける現在の役割は、これまでのキャリアとはいくつかの点で大きく異なります。まず、ホールディングスの立場であること。そして、百貨店が私にとって初めての業界であること。さらに、デジタル(ビジネス領域)とITの両方を管掌していることが、自分にとって大きなチャレンジであり、やりがいを感じる部分です。 

ホールディングスとしての立場では、私たち自身が直接お客様向けのサービスモデルをつくるわけではありません。しかし、ホールディングスという立場なら、各事業会社——大丸、松坂屋、パルコといった企業——がそれぞれの強みを活かして取り組んでいる領域をつなぎ、統合することで新しい価値を生み出すことができます。 

例えば、各社のデータを一つに統合すると、「この店舗で特定の商品を購入したお客様が、別の施設ではこうした購買行動をしている」といった傾向が見えてきます。これにより、「この商品を買う人は、実は別のカテゴリーにも関心を持つ可能性がある」「こういう買い方をするお客様は、長期的に関係を築ける傾向がある」といった洞察を導くことができるのです。 

つまり、CIOの役割は単にITを最適化することではなく、「事業会社がより大きな価値を生み出せる環境をどう整えるか」「データからどんな発見を引き出すか」といった、これまでとは異なる筋肉の使い方を求められる仕事なのです。 

——属性が異なる大丸、松坂屋、パルコのデータをどのようにマージして分析すると、ビジネスに役立つインサイトが得られるのでしょうか。 

単一の「販売データ」だけでは見えてこない関係性も、複数のデータを掛け合わせることで立体的に可視化できるようになります。 

例えば、あるお客さまが大丸でバッグを購入し、その数時間後にパルコでタピオカドリンクを買っていたとします。一見、一人で行動しているように見えますが、その後の購買行動を見ると、お嬢さんと一緒に買い物をしていた可能性が浮かび上がります。このような見方をすることで「家族でJFRグループの施設を回遊しているかもしれない」という“見えなかった顧客像“が見えてくるのです。 

このような発見から、「家族で過ごす時間を大切にする顧客層に対して、どんな提案をすれば長くお付き合いいただけるか」というストーリーが生まれます。売上やクロスセルといった短期的な成果だけでなく、お客さまとの関係性をどのように深めるかをデータから描くことができるのです。 

このように、データの統合と洞察を通じて「見えないつながり」を可視化し、グループ全体の価値を高めていくことこそが、ホールディングスのCIOとしてのやりがいだと感じています。 

経営とITをつなぐ共通言語としての「フィロソフィー」 

——CIOに欠かせないリーダーシップのあり方をお教えください。 

ぜひ教えてほしいくらいですが(笑)、自分なりに意識していることはいくつかあります。 

まず一つは、「ビジョンを示すこと」です。企業の中にはさまざまな案件があり、それぞれがつながり、連携しながら一つの形になっていくわけですが、その全体像の中心にあるのが「私たちは何を目指しているのか」という共通の目的意識です。JFRではこれを「システムフィロソフィー」という言葉で表しています。 

この言葉を経営層と共有しながら、「私たちは何をつくろうとしているのか」という目的を明確にし、その共通認識のもとで改革を進めています。 

システムフィロソフィーの基本は、「共通のインフラの上で、できる限りアプリケーションを共通化し、顧客情報を含むグループ全体のデータを一つの基盤に集約して活用する」というものです。言葉にすれば当たり前ですが、現実には各案件が個別最適で進んだ結果、微妙に異なるインフラやデータ定義が乱立し、全体の整合性が取れなくなることが多々あります。 

それは決して誰かの怠慢ではなく、「目の前の課題に懸命に取り組んだ結果、起こること」です。だからこそ、プロジェクトごとの努力を無駄にしないためにも、共通のフィロソフィーとビジョンを通わせることが重要だと考えています。 

全員が「自分たちは何のためにこれをやるのか」を理解し、「ちょっとフィロソフィーを意識しようよ」という意識をデザインやシステム構築の中に反映させることを、私は強く意識しています。 

また、ビジョンを示すことは大切ですが、それだけでは現実との距離があり、壁に掲げただけのスローガンのように見逃されてしまいます。だからこそ、「具体的なデザインをするときには、ビジョンとの接点を持つようにすること」を意識してメンバーに伝えています。 

そうすることで、「こうでなければならない」という、上からの押し付けではなく、ビジョンを軸にした行動やデザインに方向が揃っていくと思うのです。 

——「システムフィロソフィー」という言葉をつくったきっかけは? 

IT部門がITのために“きれいな仕組み”をつくろうとすると、どうしてもアーキテクチャ設計から入ることになります。一般的には整然とした構造を描き、基盤を整備し、「このように構築していこう」という話になります。 

もちろん、それ自体は間違っていないのですが、それを経営層に伝えようとすればするほど理解が深まるどころか、かえって溝が生まれてしまうことがあります。「また難しいことを言っているな」と受け取られてしまうことが少なくないのです。 

しかし、先ほどお話ししたような考え方であれば、「これはシステムフィロソフィーなんです」と伝えればよいわけです。 

実際に話している内容はアーキテクチャ論に近いのですが、「システムの共通化はあくまで、経営資源を最大限に活かすための環境づくりであり、その基盤を使って蓄積されたデータを活用することでデータドリブン経営ができる」ということにつながるので、フィロソフィーが「経営の意図を具現化したもの」のように見えるのです。 

つまり、ITが経営を支える形で一体化するということになるので、結果として、「IT部門の取り組みは、経営が描くビジョンを実現するための具体的なアクションである」ということを示すことができるのです。 

それは経営側から見ても、IT部門が「難しい専門用語を並べる集団」ではなく、「経営の意図を現場で具現化する実践部隊」として理解されることにつながります。 

さらにこのフィロソフィーは、事業会社のIT部門と協議する際の「共通の約束ごと」としても機能します。個々の案件ではアプローチや課題が異なっても、「グループ全体としてどの方向を目指すのか」という軸が明確であれば、議論の基準が揃います。そうすることで、プロジェクト単位の最適化にとどまらず、全体最適を見据えた取り組みへとつながっていくと思うのです。 

いかにステークホルダーを見つけられるかが、プロジェクトの推進力に 

——次世代リーダーへのメッセージをいただけますか? 

私からお伝えできるのは「アドバイス」というより、2つの心がけです。 

まず1つ目は、できるだけ多くのステークホルダーを見つけることです。どんなテーマにも、直接関わる当事者だけでなく、その周辺に多くの関係者がいます。データや業務の流れをたどっていくと、一見関係がなさそうな人も、実は密接に関わっていることが少なくありません。 

そうした人たちと話してみると、最初に与えられたテーマとは少し違う角度から、「この人の課題も一緒に解決することになるかもしれない」「この人にとっても良い変化になるかもしれない」と気づくことがあります。 

それが結果的に、思いがけない“味方”を増やすこともありますし、苦しい局面で「頑張れよ」と背中を押してくれる人が現れることもあります。だからこそ、自分の取り組みを俯瞰的に見て、「誰の笑顔を増やせるか」を意識しながら、関わる人を広く見渡してほしいと思います。 

2つ目は、社外のつながりを持つことです。リーダーの役割は孤独で、社内ではなかなか本音を話せない場面もあります。そんな時、業界を超えて話ができる仲間の存在は、とても心強いものです。 

勉強会やイベントなどで出会った「価値観が合う人」とつながっておくと、悩んだときに「それは面白い、やってみたら?」と励ましてもらえることがあります。その一言が「よし、もう一度頑張ろう」と前を向くきっかけにもなるのです。 

社内ではどうしても議論が“ガチ”になりがちですが、社外であればもう少しフラットに、自分自身の考え方やマインドも含めて話すことができます。そうした場で「自分の挑戦を肯定してくれる人」「違う視点から刺激を与えてくれる人」と出会えるのは、リーダーにとって大きな財産になると思います。 

もちろん守秘義務を守ることは大前提ですが、異業種の方と話すことで新しい発想が生まれることがありますから、社外のつながりを積極的に育て、互いに支え合える関係を持つことをおすすめします。 

課題解決やナレッジ共有を支えるデータ活用基盤の構築を目指して 

——これからの展望をお教えいただけますか? 

現在は、「システムフィロソフィー」の考え方に基づき、全社的な仕組みを一つずつデザインし、少しずつ形にしている段階です。この方針に沿って進めることで、データの基盤整備や共通化が進み、グループ全体としての一貫したシステム構造が整っていくと考えています。 

なぜ、こうした基盤づくりに注力しているのかというと、先ほどお話しした「花を咲かせるための土壌づくりの施策」だからです。 

花を咲かせるための土壌づくりには、2つの視点があると考えています。一つ目は、会社そのものの「体力」を強くすることです。 

これは単に業務を効率化したり、生産性を高めたりすることだけを指すわけではありません。ナレッジが自然に共有され、学びが蓄積されていく環境を整えることが重要です。世の中では「自動化=生産性向上」と捉えられがちですが、私たちが目指しているのはそれ以上のものです。 

課題解決や知見共有を支える仕組みそのものを整え、ナレッジが共有されやすく、蓄積されやすい基盤を構築することで、企業の体質そのものを強靭化することが一つ目の狙いです。 

二つ目は、蓄積したデータをいかに事業に生かしていくかです。データ活用というと顧客向けの施策を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、実際には店舗運営や商品開発、プロモーション、経営判断など、データを活用できるシーンは社内のあらゆる場所にあります。 

これまでの企業では、「課題があるからデータを使う」「戦略を立てるためにデータを分析する」といった使い方が中心でした。しかし、AIの進化によって、これからは日常業務の中にデータ活用が自然に溶け込む時代になると感じています。 

つまり、特定のプロジェクトでソリューションを提供するだけでなく、「日々どんなことに時間を費やしているのか」「どこに課題やストレスがあるのか」といった現場のリアルな声に耳を傾け、そこにデータやデジタルの力を重ねていくことができると思うんです。 

その中心的な役割を担うのが、私たちが育成しているデジタル人財です。各部署に配置されたデジタル人財が、日々の業務で生まれる気づきや課題とデジタル技術を結びつけるハブのような存在になってくれたらうれしいと思っています。 

このような形で基盤の上に人が育ち、人がデータを動かし、データがまた人を育てる——その循環こそが、JFRグループが目指す「花を咲かせるための土壌づくり」なのです。 


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Source: News

Category: NewsJanuary 29, 2026
Tags: art

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