受賞式後に行われた今回の座談会では、審査に携わった関係者が集まり、初年度の総括から審査プロセスの課題、生成AI時代にふさわしい評価の在り方、さらに次回に向けた期待まで、率直な議論が交わされました。
座談会に参加いただいた審査委員は、以下の通り。
- CIO賢人倶楽部 会長 – 木内美里 氏
- (株)アイ・ティ・アール(ITR)会長/エグゼクティブ・アナリスト – 内山悟志 氏
- 公立はこだて未来大学 システム情報科学部 教授 – 美馬のゆり 氏
- CIO.com Japan編集ディレクター – 武内信政

本記事では、座談会で行われた議論を整理し、アワードが直面している課題と評価軸、そして今後、目指すべき方向性について読み解いていきます。
国内初開催となった「CIO 30 Awards Japan 2025」。日本におけるCIO、CDO、CTO、CAIOといったCxOや情報システム部の管理職ほかデジタル領域のリーダーを対象に、その挑戦と意思決定を評価する本アワードは、初年度ながらも大きな反響を呼びました。
そして、受賞式という一つの節目を終えた後、審査に携わったメンバーが集まり、率直な振り返りと次回に
向けた議論が行われました。
この座談会で語られたのは、受賞した企業の成功事例の称賛だけではありません。
「なぜ評価が難しかったのか」
「どこに迷いがあったのか」
「次は何を変えるべきか」
その一つ一つの言葉を紐解くと、次回エントリーを検討する企業にとって、極めて実践的なヒントに満ちていました。
座談会の背景と目的
今回の座談会の目的は、単に受賞結果を振り返ることではありませんでした。
急速に変化するテクノロジー環境の中で、「これまでの審査方法が本当に最適だったのか」「今後どのように進化させるべきか」を関係者間で共有し、次回以降の改善につなげることが大きな狙いでした。
生成AIの活用が一般化する中で、応募書類の完成度は年々高まっています。一方で、審査員側の負荷は増大しており、公平性や評価の本質をどのように担保するかが重要な課題として浮かび上がっています。
こうした問題意識を背景に、本座談会は開催されました。
初開催で見えた課題:周知の難しさとエントリーの偏り
冒頭、今回の受賞式について総評を述べたのはCIO賢人倶楽部会長の木内正美氏です(以下、
木内氏)。
木内氏 – – – 「今回は初開催ということもあり、準備期間が限られていました。周知の面では十分だったとは言えず、結果としてエントリーが特定のコミュニティに偏ってしまった点は反省すべきところです。今年は、より広く(受賞式・エントリー)情報を届け、多様な企業に参加してもらえる形がよいかと思います。」
アワードの価値は、多様な企業によるエントリーや取り組みが集まることで高まります。周知方法やスケジュール設計が、結果に大きく影響することが改めて共有されました。
国内初開催。
前例がない中で、どこまで周知できるのか、どのターゲット層に届くのかは未知数でした。昨年、開催にはたどり着けましたが、海外の仕組みをそのまま持ってきて実施したため、付け焼刃的な周知となりました。
また、アワードの特設サイトを開設し告知を行ったにも関わらず、日本市場で理解を広げるための時間は限られていました。そのため、部門ごとのエントリーにも偏りが見られました。
一方で木内氏は、「それでも開催した意義は大きかった」と強調します。
木内氏 – – – 「短期間でこれだけの取り組みが集まったという事実は、日本のCIO層がすでに相当高いレベルにあることを示しています。むしろ、次はどこまで裾野を広げられるかが課題です」
初回は「知っている人が集まりエントリーした」側面がありましたが、次回はそこから一歩踏み出すフェーズに入ります。
これまで表に出てこなかった挑戦的な取り組み、まだ途上にあるDX(デジタル・トランスフォーメーション)が、より評価されやすくなる可能性があります。「まだ途中段階だから」「完成度が十分でないから」と躊躇する必要はありません。むしろ、プロセスの途中にある企業こそ、語る価値がある段階に来ています。
運営事務局よりアナウンスした各部門のエントリー募集における定義や名称、そして評価軸も次回以降、より明確化して告知する予定です。
審査現場のリアル:重要なのは「情報量」より「伝わり方」
受賞式の表舞台とは対照的に、審査の現場は極めて地道な作業の連続です。
その実情を語ったのが、調査・コンサルティング会社アイ・ティ・アール(ITR)会長の内山悟志氏(以下、内山氏)でした。
内山氏 – – – 「他の審査会においても審査員一人あたり、50~60社ほどの応募も見ることも珍しくありません。テキストだけでなく、添付資料やURL、記事を含む関連情報まで含めると、相当な分量になります」
限られた時間の中で、多くの取り組みと向き合う。その現実の中で、内山氏が重視していた視点がありました。
重要なのは、「どれだけ書いたか」ではなく、「何が伝わったか」だと内山氏は強調します。
内山氏 – – – 「情報量が多いほど評価が高くなるわけではありません。限られた時間の中で、何がポイントなのかが明確かつ整理されている応募は、やはり印象に残ります」
審査員は、完璧な説明資料を求めているわけではありません。
- なぜそのテーマに取り組んだのか
- どこで悩み、何を捨てたのか
- その判断は、どんな背景から生まれたのか
この「思考の筋道」が整理されているかどうかが、評価の分かれ目になります。
その一方で、短時間の動画やプレゼンテーションの方が、企業の特徴や取り組みの本質が伝わりやすいと感じる場面もあるといいます。
書類中心の審査が最適なのかどうかを、改めて検討する必要性が浮き彫りになりました。
CIO.com Japanの編集ディレクターの武内氏は、以下のようにコメントしています。
「海外で開催しているCIO Awardsは開催地域によっては非常にシンプルで、受賞企業そのものを発掘して表彰する形式もある一方、例えばインドでは20年以上もCIO Awardsを開催しています。私も昨年、審査委員の一人として参加しましたが、エントリー項目が細かく設定されおり、スコアリングの点数も記載し、絶対評価と相対評価によるハイブリッドの審査方法も見受けられました」
今回は試行錯誤の末、海外版CIO Awardsのエントリーおよび、審査方式を一部採用しました。今後、国内版がスケールアップするタイミングで、短い動画やプレゼンの活用など、さらにローカライズする審査方法を検討していく方向で審査委員の意見が一致しました。
AI時代の審査設計:AI活用は前提、見るべきは「意思」
議論が深まるにつれ、話題は自然と生成AIへと移っていきました。座談会の中核となったテーマが、生成AIとの向き合い方です。
このテーマについて、公立はこだ未来大学の美馬のゆり教授(以下、美馬氏)は、応募者による生成AI活用を前提にした審査設計の必要性を指摘しました。
美馬氏 – – – 「応募者が生成AIを使って文章を作成することは、もはや避けられません。そうであれば、一次審査の段階でAIを活用し、評価軸と重み付けを明確にした上で点数化するという方法も現実的ではないでしょうか。その結果を踏まえ、人が深く見る対象を絞ることができます」
さらに美馬氏は次のように補足します。
美馬氏 – – – 「生成AIを使って文章を書くこと自体は、もう前提条件になっています。重要なのは、『AIで書いたかどうか』ではなく、『その内容が何を示しているか』です」
文章の巧拙ではなく、そこに込められた判断や意思。その重要性が、強調されました。
美馬氏は、審査の役割分担についても言及します。
美馬氏 – – – 「一次的な整理や点数化はAIに任せ、人は『なぜその選択をしたのか』『そこにどんな覚悟があったのか』を見る。そうした設計に変えていく必要があると感じています」
その一方、CIO.com Japanの編集ディレクター、武内氏は以下のように述べています。
「昨年、インドのアワード審査員を務めましたが、数百社におよぶエントリーシートを読み解きました。そこで海外の編集者からも意見が出たのは、エントリー企業の『生成AIの利用頻度』でした」
ある編集者は約半分の割合で生成AIを活用し、エントリーシートを提出している痕跡が見受けられ、審査の過程で問題提起をしたとコメントしていました。
生成AIを使うこと自体は問題ではありません。むしろ、AIでは説明できない部分――つまり、
- 人としての意思決定
- 組織をどう動かしたか
- 反対意見とどう向き合ったか など
こうした要素を、どれだけ自分の言葉で語られているかが、エントリーする際、今後ますます重要になります。AI時代だからこそ、「人の判断」がより際立つ評価軸が求められています。
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