未来は、自分たちにはどうにもならない巨大な力によって決まるものではない。未来は人間の選択の中にある。テクノロジーを使うすべての人はこのことを認識しておくべきだ。
20世紀のフランスの哲学者アンリ・ベルクソンはこう言った。「人間は自分の未来が自分の手の中にあることを、十分に認識していない」。私たちは一人ひとり、未来がどうあるべきかについて発言権を持っている。
未来学の研究者たちは、社会が未来に対する主体性を放棄しつつあることに懸念を呈している。一部の著名なCEOたちが「宇宙移住」「仮想現実」「AI支配」という未来を声高に語っている。問題は、多くの人がそれを黙って受け入れていることだ。IT業界の人間が声を上げなければ、未来は気づかぬうちに奪われる。
未来を「ただ迎える」のではなく「自ら作る」ことは簡単ではない。見えない先を合理的に考え、選択肢を絞り込む作業が伴うからだ。そして、CIOはその議論を組織の中で起こせる立場にある。
以下に、その妨げとなる5つの課題と、CIOにできることを示す。
- 主体性の欠如——「未来は自分たちが決める」という信念
未来はまだ決まっていない。5年後、10年後、50年後の世界は、今の選択次第だ。組織のスタッフやユーザーにそう信じてもらうのは難しいが、ストーリーテリングや対話、協働を通じて「自分にも変化を起こせる」という感覚を育てることができる。
- 想像力の欠如——ユートピアとディストピアの間にある無数の選択肢
未来の形は無限にあるはずなのに、人の想像はどうしても両極端に向かいがちだ。理想郷か、文明崩壊か、監視社会か——その間にある膨大な可能性が見落とされる。Google Xの元デザイン責任者Nick Foster氏は、少なくとも4つのシナリオを描くことを勧めている。「起こり得る未来」「あるべき未来」「ひょっとしたら起こる未来」「あってはならない未来」の4つだ。
未来を語るには、もっと具体性が必要だ。インターネットやSNSが登場する前、監視社会やフェイクニュース、アルゴリズムによる差別がここまで深刻な問題になると予測した人はほとんどいなかった。今日の現実を直視し、その先に何が起きうるかをステークホルダーと一緒に考える——それがCIOの役割だ。
- 未来への注意力の欠如——「未来を考える時間」を意図的に確保する
未来について考え、議論する時間を確保しているだろうか。確保していたとしても、多くの場合、その議論は「最悪の事態」か「最良の事態」に集中しがちだ。しかし実際に起こる未来は、その間のどこかにある。
Toyota Motors USAの元CIO、Barbara Cooper氏は、5年後・10年後の「日常の平凡なリズム」にチームの目を向けさせた。壮大なビジョンではなく、普通の人々の普通の一日を想像することから始めたのだ。
これを参考に、思考実験としてこんな問いを投げかけてみてはどうだろう。1000年後、私たちは何をしているのか。3026年はどんな世界なのか。
- 情熱の欠如——未来への無関心と向き合う
私たちが集合的に向かっている方向に、人々は本当に関心を持っているだろうか。さまざまな世代で広がる無力感や虚無主義、高い無関心、低い制度への信頼、孤立と離反——これらが未来を作る努力の妨げになっている。
CIOは、ステークホルダーが本当に気にしている問いに応える未来の物語を作ることができる。「この未来の中で、自分はどこにいるのか。自分の状況を自分でコントロールできるのか。意味のある何かの一部になれるのか」。そこに応える物語があれば、人は自ら動き出す。
- 状況認識の欠如——今の行動が明日の方向を決める
多くの組織は、自分たちが今どこに向かっているかを把握できていない。今日の行動が、明日の方向を決める。立ち止まって周りを見渡す時間を意図的に作ることが重要だ。スタッフやステークホルダーと対話すれば、必ず気づきがある。
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