誰も認めないCIOの後継者問題
退任したくてもできないCIOが実際に存在する。より大きな企業からオファーを受けた人、引退を考えていた人、取締役会の席をオファーされたが辞任が条件だった人——いずれも同じ壁にぶつかった。CEOに「誰が後を継げるか」と聞かれたとき、答えられなかったのだ。ナンバー2は技術的に優秀で、業務面でも頼れる存在だった。しかし誰もが、リーダーではなくアーキテクトとして育てられていた。変革の最中に外部採用を承認する取締役会はない。こうしてCIOは留まり続ける。
CIOはC-suiteの中で最も後継者育成が手薄なポジションだ。ほとんどのCIOが、この後継者問題に同じタイミングで気が付く。四半期レビューでも取締役会の合宿でもない。退任しようとした瞬間だ。その時点で、選択肢はすでに限られている。
アーキテクトの罠
多くのIT組織で同じパターンが繰り返される。CIOの直属部下の頂点に上り詰めるのは、複雑なアーキテクチャを最もよく理解している人物だ。プラットフォームの意思決定、ベンダーの整理、統合マップ——こうした仕事を任せられる存在で、その信頼は実績に裏付けられた確かなものだ。しかしアーキテクチャへの信頼と、リーダーシップへの信頼は別物だ。
技術的な深さで昇進させると、組織を設計できても組織を動かせない後継候補が生まれる。CFOとP&Lを議論したことがない、事業部門長に厳しい話をしたことがない、予算の項目を守るために相手と渡り合ったことがない——それが現実だ。隠れていたわけではない。CIOがその会話を代わりに引き受けていたのだ。
結果として、IT部門の内側からは人材が豊富に見えても、取締役会からは候補者が空に見える状態ができる。あるCEOが後継者の議論を終えてこう言ったという。「あなたのチームは好きだ。しかし誰もあなたの後継者として想像できない」。これはCIOへの褒め言葉ではなく、チームの作り方への評価だ。
手遅れになる前にやっておくべき3つのこと
後継者育成を「いずれ取り組むこと」として後回しにするのではなく、在任1年目から意識的に設計すべきだ。以下の3つのアプローチを早い段階で実践することで、候補者が成長する時間を確保できる。
第一に、「次の候補」という肩書きではなく、実際の意思決定の権限を与える。『自分が後継者だ』と事前に知らされた候補者は、目の前の仕事よりも、社内政治や自分のハク付けばかりを意識しがちになる。一方、たとえばベンダーのエスカレーション全般を任されれば、本物の場で本物の判断を下すようになる。判断力はそこで育つ。ただしその領域は、本来CIO自身が持つべき重みのあるものでなければならない。
第二に、緊張感のある場に意図的に送り込む。優秀な後継候補を対立から守ることは、CIOが犯しがちな失敗だ。難しい会話を代わりに引き受ければ、後継候補は政治的なダメージを免れるが、何も学ばない。強く押し返してくる相手と渡り合わなければならない場に後継候補を出す。立場を守り切ることもあれば、折れることもある。どちらの結果も、後継候補が本当に頼りになる人材かどうかを測る材料になる。
第三に、必要になる前に現状を取締役会に認識させておく。冒頭で触れたCIOたちは全員、信じている後継候補がいた。しかしその誰もが取締役会に実質的なプレゼンをしたことがなかった。そのため、取締役会はその後継候補を知らなかった。後継の問いが浮上したとき、後継候補は取締役会の想像の中に存在せず、CIOの個人的な推薦だけでは足りなかった。
後継候補を初めて取締役会の前に立たせると、後継候補に変化が現れるだろう。というのも、取締役会は手加減しない。取締役会でどんな会話がなされているのかを実際に目にした後、後継候補の意識は変わるからだ。取締役会側も、現職のCIOが退任する前に後継候補との経験を積んでおく必要がある。
後継者を育てないことによる「3つのコスト」
1, 現職CIOのキャリアの停滞: 自分が退任・ステップアップしたくても、後任がいないために1年以上足止めを食らう。
2, 莫大な金銭的・戦略的コスト: 内部昇進ができず、市場価格の2.5倍の報酬で外部採用せざるを得なくなったり、変革がストップしたりする。
3, 右腕人材の喪失とモチベーション低下: 長年貢献した優秀な技術者が「リーダーシップ不足」を理由に見送られ、離職やサイレントマジョリティ化(意欲喪失)を招く。
今すぐ行うべきセルフチェック
あなたが90日後に退任するとしたら、CEOに後継者の名前を挙げて、その場で承認を得られるだろうか?
これが難しい場合、手元にあるのは「後継者の候補」ではなく、単に「業務上信頼している人のリスト」に過ぎない。本当の後継者は、偶然生まれるのではなく、意図的にデザインして育てるものだ。
Read More from This Article: 誰も認めないCIOの後継者問題
Source: News

