ITで最も誤用されているバズワード12選

スマートフォン、クラウド、AR、メタバース、コンテナ化、ボット——この20年で数多くのテック用語が一般的な語彙に入り込んできた。明確に定義されたものもあれば、専門家の間でも定義が分かれるものも多い。

そうした状況の中で、ビジネスの現場では「置いてきぼりにされたくない」という不安から、意味を十分に理解しないまま最新用語を使う人が少なからずいる。その結果、言葉は本来の意味を失い、コミュニケーションや部門間の連携を妨げる。CIO.comが定期的に行うテックリーダーへの調査から割り出した「最も誤用されているバズワード」の最新版をお届けする。

  1. デジタルトランスフォーメーション(DX)

    毎回トップに挙がるのが「デジタルトランスフォーメーション」だ。BTE PartnersのCIO兼CISO、Sue Bergamo氏はこう言う。「この言葉はほぼすべてのベンダーがマーケティングに使ってきた。中身のない言葉で、マーケティングが売りたいものに何でも当てはめられる」

    FICOのCIO、Mike Trkay氏も同じ見解だ。「DXについて話す人の多くは、紙のプロセスをデジタル化しているだけで、ビジネスの根本的な変革——トランスフォーメーションの本質——に取り組んでいるのではない。テクノロジーの入れ替えと捉えてしまうと、プロセスそのものを見直し、効率化や価値創出につなげるチャンスを逃してしまう」

  2. AI・機械学習・インテリジェンスに関する用語全般

    2位はAI関連の用語群だ。「AI」という言葉が自動化や基本的なアルゴリズムまで広くカバーして使われており、本来のAIが持つ変革的な力を矮小化していると指摘する。

    「最近、私が最も気になっている誤用バズワードはAIだ」とBergamo氏は言う。「AIは長年にわたって存在してきたが、ようやく本来の実力を発揮し始めた。真のAIには、あらゆる人の仕事を改善できる力がある」。

  3. 責任あるAI(Responsible AI)

    Trkay氏は「責任あるAI」も誤用されがちな言葉だと指摘する。「データ保護の話だけに限定されてしまっているが、説明可能なAI、監査可能なAI、倫理的なAIなど、責任あるAIにはもっと多くの重要な要素がある。データ漏洩への対処は重要だが、バイアスやハルシネーション、説明可能性や監査可能性に取り組まなければ、リスクにさらされることになる」

  4. エージェンティックAIとAIエージェント

    SutherlandのCIO兼CDO、Doug Gilbert氏は、エージェンティックAIとAIエージェントが登場したことで、他のAI技術はもう不要だと思われている節があると指摘する。「『エージェンティックに移行するなら、生成AIに投資する意味はあるのか』と聞かれることが多い」とGilbert氏。

    米フェニックス大学でCIOを務めるJamie Smith氏も同意する。「『エージェント』や『エージェンティック』は、仮想チャットアシスタントや何らかのタスクを実行するAI全般と混同されがちだ。エージェンティックシステムの本質は、自律性と目標追求型の行動にある。信頼が高まるにつれて自律性が増し、最適化すべき目標を与えることで成果を改善する。こうした特性がなければ、それはエージェンティックではなく、単なるAIワーカーに過ぎない」。

  5. AIハルシネーション

    Gilbert氏は「ハルシネーション」という言葉についても、同様の問題を指摘する。「AIのあらゆるエラーがハルシネーションに帰因されてしまう。データの問題、モデルの問題、プロンプトの不正確さ、バイアスのあるデータが原因であっても、すべてハルシネーションと呼ばれてしまう」。

  6. 大規模言語モデル(LLM)

    Wolters KluwerのCIO、Mark Sherwood氏は「large(大規模)」という形容詞に引っかかりを感じる。「誰もが大きいことはわかっている。毎年さらに大きくなっている。だから単に『言語モデル(LM)』と呼べばいい」と言う。

    「大規模」の定義が曖昧なままでは、自社のニーズに本当に必要なのは大規模モデルなのか、小規模モデルなのかという判断が難しくなる。言葉の定義はビジネス上の意思決定に影響するのだ。

  7. ゼロトラスト

    Sherwood氏はゼロトラストという言葉にも違和感を覚える。「何も信頼しないという印象を与えるが、実際は違う。信頼しないのではなく、信頼する対象を明確に絞り込んでいるだけだ」。

    Bergamo氏は別の観点から問題を指摘する。「ゼロトラストはコンセプトであって、アーキテクチャでも製品でもない。多要素認証などの製品を導入するたびにゼロトラストの一部が実装されるが、環境全体のセキュリティが保証されるわけではない。真のセキュリティは多層的なアプローチから始まる」。

  8. 技術的負債

    「技術的負債」という言葉の定義は、IT部門の内外で人によって異なる。

    後で修正することを前提に、品質より速度を優先して意図的に展開した不完全なコードを指す人もいれば人もいれば、レガシーシステムやその維持コストを指す人もいる。

    Cybellis ConsultingのファウンダーでPenske MediaのIT担当VPを務めた経験を持つKaren Swift氏はこう言う。「理論上は先送りされた保守やアーキテクチャの近道の積み重なったコストを意味するが、実際には基幹システムへの慢性的な投資不足を隠す言葉として使われていることが多い。システムが時代遅れで脆弱だと正直に言う代わりに、『技術的負債』という言葉でごまかしているケースが多い」。

  9. イノベーション

    長年使われてきた明確な意味を持つ言葉まで誤用されるようになった。「イノベーションは、説明責任やスケール、測定可能な成果への明確な道筋のない実験として語られることが多い」とSwift氏は言う。「特に『AIイノベーション』とすれば、AI関連のあらゆる活動を指す曖昧な言葉になっている」。

  10. 自動化(オートメーション)

    Swift氏は「自動化」も同様だと指摘する。「スクリプティングやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を指す言葉として使われることが多いが、業務プロセス全体の見直しや、組織の変化への対応、継続的な効率改善まで考慮せずに導入されることが多い。ビジネスプロセスを見直さない自動化は、既存の非効率を加速させるだけだ」。

  11. ポスト量子コンピューティング

    Sherwood氏は「post(ポスト、後の意味)」に引っかかりを感じるという。「『ポスト量子』という言葉は、まるでY2K(2000年問題)のように、ある日突然切り替わるイベントのように聞こえる。しかし実際には、量子コンピューティングの時代はじわじわと、気づかないうちにやってくる。いつ『ポスト量子』になったと言えるのか、誰にも定義できない」。

  12. 「ビジネス」(部門)

    最後はバズワードとは少し異なるが、ITの自己認識と他部門からの見られ方に関わる言葉だ。
    Smith氏はこう指摘する。「『ビジネス(部門)』という言葉を使って、テクノロジーとビジネスを別々の存在として扱う時代は終わった。ITをビジネス部門の『コンサルタント』と位置づける限り、本当のエンドユーザーへの貢献は遠のく。今やテクノロジーとビジネスは一体であり、切り離して考えることはリスクだ」。


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防衛産業はなぜイノベーションの“エンジン”になり得るのか

防衛需要が持つ“特殊な市場設計”

防衛産業を語るとき、しばしば「軍事だから特殊だ」という印象だけが先行する。しかしイノベーションの観点から重要なのは、軍事というラベルではなく、市場としての設計が他の産業と決定的に異なる点にある。防衛の調達は、多くの国で国家の安全保障を支える公共目的に基づき、単年度の売上や流行によって需要が激しく上下する一般消費財とは異なるリズムで動く。もちろん政治や国際情勢に左右される側面はあるが、少なくとも企業が短期的なブームに乗るだけで成果が出る世界ではない。

この「短期の収益競争だけで回らない」構造が、研究開発の意思決定に独特の余白を与える。民生市場では、投資家や株主の視線、競合との価格競争、顧客の嗜好変化によって、研究開発はしばしば「早く売れるもの」に引き寄せられる。対して防衛分野では、装備品の寿命が長く、開発から配備までに時間がかかり、運用期間も十年単位に及ぶことが多い。結果として、研究開発は単なる新機能追加ではなく、長期にわたって維持・改良・更新されるシステムとして設計される。

さらに、防衛調達には「安さ」だけでなく「確実性」「継続供給」「安全性」「相互運用性」といった、目に見えにくい価値が強く求められる。ここで重要なのは、これらの価値が単なる条件ではなく、技術開発の方向性そのものを規定することだ。たとえば、性能を最大化するだけなら実験室レベルの尖った技術で良い場合もある。しかし、防衛で求められるのは、過酷な環境で確実に動き、故障時の影響を最小化し、運用部隊が扱える形に落とし込まれた「実装された技術」である。つまり、防衛産業はイノベーションを“発明”ではなく“実用化”として推進する装置になりやすい。

この点を押さえると、防衛産業がイノベーションのエンジンたり得る理由が見えてくる。それは防衛が「技術の最高到達点」を競うだけの世界ではなく、「不確実性の高い状況で機能し続けること」を目的に、研究開発から運用までを一つの連続体として設計する世界だからだ。その連続体が、技術を磨き上げ、周辺領域を巻き込み、最終的に民生にも波及する力を持つ。

要求性能が研究開発を押し上げる

イノベーションは、しばしば「困難な要求」によって生まれる。防衛分野の要求は、まさに困難の塊だ。高温・低温、振動、衝撃、塩害、砂塵、電磁環境、通信途絶、電源制約、重量制約、そして敵対的な妨害。こうした条件が同時に課される中で、一定以上の性能を保証しなければならない。民生でも厳しい要求はあるが、極限条件が重なり合う密度は防衛が突出している。

この“無理難題”が、研究開発を押し上げるメカニズムは単純で、既存技術の延長では達成できない目標が設定されるからだ。たとえば、通信が不安定な環境で情報共有を成立させるには、単に通信速度を上げるだけでは足りない。ネットワークが途切れる前提で、必要最小限のデータを優先順位づけして送り、途絶後もシステムが破綻しない設計が求められる。そこで、通信技術だけでなく、データ圧縮、分散処理、フォールバック設計、暗号と認証、ユーザーインターフェースまで含めた全体最適が必要になる。

要求性能が高いほど、技術の改良は“点”ではなく“面”になる。材料だけ、センサーだけ、ソフトウェアだけを良くしても目標に届かない。結果として、複数領域を横断した研究開発が誘発され、異なる専門性の接続点で新しいアイデアが生まれる。たとえば、軽量化という課題一つとっても、材料工学の改善に加え、構造設計の見直し、製造プロセスの革新、部品点数の削減、さらにはソフトウェア側での補正や制御による性能確保が連動する。こうした連動は、技術の“組み合わせ”を通じて新しい価値を生む典型であり、まさにイノベーションの起点になる。

しかも、防衛分野では性能要求が「理想」ではなく「生死に関わる現実」として扱われる。ここが大きい。民生では性能が多少不足しても、顧客が不満を抱く程度で済むケースがある。しかし防衛では、性能不足が任務の失敗や人的被害につながり得る。だからこそ要求は厳しく、検証も徹底される。その厳しさが、技術を“動けばよい”から“確実に動く”へと押し上げる。そして「確実に動く」ための知見は、医療機器、航空、エネルギー、インフラ、災害対応など、信頼性が価値になる領域に横展開しやすい。

長期投資と“技術成熟”の論理

防衛産業がイノベーションのエンジンになり得るもう一つの理由は、技術成熟に時間がかかることを前提に投資が組まれやすい点にある。新技術は、最初から完成形として現れない。研究室では動いても、現場では動かない。試作品では動いても、量産では品質が揃わない。単体では動いても、システムとしては不安定になる。こうした“成熟までの谷”を越えるには、繰り返しの試験と改良が必要であり、そこに時間も費用もかかる。

民生市場にも長期投資はあるが、競争環境が激しいほど、企業は短期の売上やシェアを優先しやすくなる。すると、成熟が遅い技術は途中で打ち切られたり、別用途に転用されたりする。防衛分野は、その一部を吸収できる構造を持ち得る。装備は長期運用が前提で、改良も継続的に行われるため、技術は“買って終わり”ではなく“育てる”対象になりやすい。

この「育てる」視点が、イノベーションを生む。なぜなら、育てる過程で見つかる課題や失敗が、次の技術につながるからだ。試験で初めて露呈する弱点、運用現場で初めて見える使いづらさ、整備段階で初めて発覚する交換性の問題。これらは研究室からは見えにくいが、現場に持ち込むことで可視化される。そして可視化された課題は、次の改善の具体的な目標になる。こうして技術は“現実に耐える形”へと鍛えられる。

長期投資のもう一つの側面は、基礎技術の蓄積である。防衛システムは複雑で、何か一つの部品を入れ替えるだけでも、全体の再検証が必要になることが多い。そのため、企業は基盤技術を自社内に蓄積し、設計変更の影響を理解し、システムの整合を取れる体制を維持しようとする。これは短期最適の外注では得にくい能力だ。基盤技術の厚みは、平時にはコストに見えるかもしれない。しかし、技術の転換点が来たとき、蓄積が一気に価値へ変わる。新しいセンサー、新しい材料、新しい通信方式が登場したとき、それを既存システムに統合し、運用に落とし込み、信頼性を保証する力は、蓄積からしか生まれない。

この意味で、防衛産業が生むイノベーションは「一発の発明」ではなく、「成熟と統合の積み上げ」によるものが多い。そして成熟と統合の積み上げは、医療・航空・宇宙・インフラなど、同じく長期運用と高信頼が求められる領域にそのまま転写される。

システム統合が生む新価値

防衛で価値を生む技術は、単体の性能だけでは語れない。むしろ重要なのは、複数の技術を束ね、目的に沿った形で機能させる「統合」である。現代の防衛システムは、センサーが状況を捉え、通信が情報を運び、指揮統制が意思決定を助け、プラットフォームが行動し、補給と整備が継続性を支える。その全体が連携して初めて価値が立ち上がる。

統合が難しいのは、要素ごとに最適化の方向が異なるからだ。センサーは感度を上げたいが、上げるほど誤検知やデータ量が増える。通信は帯域を増やしたいが、増やすほど秘匿や妨害対策が難しくなる。処理は高性能化したいが、電力や熱、重量の制約がある。人間の判断を支援したいが、情報を出しすぎると認知負荷が増える。こうしたトレードオフを、現実の運用を見据えて調整する過程で、新しい設計思想やアーキテクチャが生まれる。

統合の革新は、しばしば“見えない発明”として現れる。たとえば、データの優先度設計、冗長系の切り替えロジック、障害時の縮退運転のシナリオ、ソフトウェア更新の手順、ログの取り方、運用者の教育体系。こうした要素は、派手な新素材や新アルゴリズムほど注目されないが、システムの価値を決定づける。防衛分野は、この“見えない発明”に投資しやすい。なぜなら、システムの失敗が許されず、運用が長期に及び、外部環境が敵対的であるため、見えない部分の設計こそが生存条件になるからだ。

そしてこの“統合の知恵”は民生に移植されやすい。スマートシティ、交通管制、エネルギーマネジメント、工場の自動化、遠隔医療、災害対応。これらも複数の技術が絡み、システム全体の整合が価値になる。防衛の統合で鍛えられた能力は、こうした領域で「複雑さを扱う力」として競争優位に転化する。

高信頼・安全設計が民生の競争力になる

防衛産業がイノベーションのエンジンたり得ることを、最後に“品質と安全”の視点から整理したい。防衛分野は、性能が高いだけでは不十分で、信頼できることが必須になる。信頼とは、故障しにくいことだけではない。故障したときにどう振る舞うか、予兆をどう検知するか、回復にどれだけ時間がかかるか、誰が何をすれば復旧できるかまで含む。つまり「壊れない」ではなく「壊れ方を設計する」世界である。

この世界では、フェイルセーフ、冗長設計、監視と診断、変更管理、トレーサビリティといった概念が、机上の理想ではなく実務の中心になる。設計段階でのレビュー、試験段階での検証、運用段階でのフィードバックが連続し、改善が続く。ここで生まれるイノベーションは、製品の新機能ではなく、信頼を生むプロセスそのものだ。

民生側でも、社会の重要インフラがデジタル化し、AIが意思決定に関与し、サイバー攻撃が現実の脅威になるほど、「確実に動くこと」の価値は急速に上がっている。スマートフォンのアプリなら落ちても笑い話で済むが、病院のシステム、発電所の制御、交通網の最適化が落ちれば社会は止まる。こうした領域では、防衛で磨かれた高信頼設計が直接の競争力になる。しかも高信頼設計は、顧客の信頼だけでなく、規制対応や監査、保険、契約条件にも影響し、事業としての持続性を左右する。

防衛産業がイノベーションのエンジンになり得る理由は、ここに集約できる。防衛は、最先端技術を追うだけでなく、長期投資で技術を成熟させ、統合によって実装価値を生み、高信頼の設計思想を社会に持ち込む。その結果として、民生へ波及する技術と方法論が生まれる。防衛とイノベーションの関係を理解するとは、兵器の話をすることではない。極限の要求条件の中で、技術を「使える形」に鍛え上げる仕組みを理解することだ。そしてその仕組みは、これからの社会が直面する不確実性の時代において、産業全体にとっての学びになり得る。


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