ITで最も誤用されているバズワード12選
スマートフォン、クラウド、AR、メタバース、コンテナ化、ボット——この20年で数多くのテック用語が一般的な語彙に入り込んできた。明確に定義されたものもあれば、専門家の間でも定義が分かれるものも多い。
そうした状況の中で、ビジネスの現場では「置いてきぼりにされたくない」という不安から、意味を十分に理解しないまま最新用語を使う人が少なからずいる。その結果、言葉は本来の意味を失い、コミュニケーションや部門間の連携を妨げる。CIO.comが定期的に行うテックリーダーへの調査から割り出した「最も誤用されているバズワード」の最新版をお届けする。
- デジタルトランスフォーメーション(DX)
毎回トップに挙がるのが「デジタルトランスフォーメーション」だ。BTE PartnersのCIO兼CISO、Sue Bergamo氏はこう言う。「この言葉はほぼすべてのベンダーがマーケティングに使ってきた。中身のない言葉で、マーケティングが売りたいものに何でも当てはめられる」
FICOのCIO、Mike Trkay氏も同じ見解だ。「DXについて話す人の多くは、紙のプロセスをデジタル化しているだけで、ビジネスの根本的な変革——トランスフォーメーションの本質——に取り組んでいるのではない。テクノロジーの入れ替えと捉えてしまうと、プロセスそのものを見直し、効率化や価値創出につなげるチャンスを逃してしまう」
- AI・機械学習・インテリジェンスに関する用語全般
2位はAI関連の用語群だ。「AI」という言葉が自動化や基本的なアルゴリズムまで広くカバーして使われており、本来のAIが持つ変革的な力を矮小化していると指摘する。
「最近、私が最も気になっている誤用バズワードはAIだ」とBergamo氏は言う。「AIは長年にわたって存在してきたが、ようやく本来の実力を発揮し始めた。真のAIには、あらゆる人の仕事を改善できる力がある」。
- 責任あるAI(Responsible AI)
Trkay氏は「責任あるAI」も誤用されがちな言葉だと指摘する。「データ保護の話だけに限定されてしまっているが、説明可能なAI、監査可能なAI、倫理的なAIなど、責任あるAIにはもっと多くの重要な要素がある。データ漏洩への対処は重要だが、バイアスやハルシネーション、説明可能性や監査可能性に取り組まなければ、リスクにさらされることになる」
- エージェンティックAIとAIエージェント
SutherlandのCIO兼CDO、Doug Gilbert氏は、エージェンティックAIとAIエージェントが登場したことで、他のAI技術はもう不要だと思われている節があると指摘する。「『エージェンティックに移行するなら、生成AIに投資する意味はあるのか』と聞かれることが多い」とGilbert氏。
米フェニックス大学でCIOを務めるJamie Smith氏も同意する。「『エージェント』や『エージェンティック』は、仮想チャットアシスタントや何らかのタスクを実行するAI全般と混同されがちだ。エージェンティックシステムの本質は、自律性と目標追求型の行動にある。信頼が高まるにつれて自律性が増し、最適化すべき目標を与えることで成果を改善する。こうした特性がなければ、それはエージェンティックではなく、単なるAIワーカーに過ぎない」。
- AIハルシネーション
Gilbert氏は「ハルシネーション」という言葉についても、同様の問題を指摘する。「AIのあらゆるエラーがハルシネーションに帰因されてしまう。データの問題、モデルの問題、プロンプトの不正確さ、バイアスのあるデータが原因であっても、すべてハルシネーションと呼ばれてしまう」。
- 大規模言語モデル(LLM)
Wolters KluwerのCIO、Mark Sherwood氏は「large(大規模)」という形容詞に引っかかりを感じる。「誰もが大きいことはわかっている。毎年さらに大きくなっている。だから単に『言語モデル(LM)』と呼べばいい」と言う。
「大規模」の定義が曖昧なままでは、自社のニーズに本当に必要なのは大規模モデルなのか、小規模モデルなのかという判断が難しくなる。言葉の定義はビジネス上の意思決定に影響するのだ。
- ゼロトラスト
Sherwood氏はゼロトラストという言葉にも違和感を覚える。「何も信頼しないという印象を与えるが、実際は違う。信頼しないのではなく、信頼する対象を明確に絞り込んでいるだけだ」。
Bergamo氏は別の観点から問題を指摘する。「ゼロトラストはコンセプトであって、アーキテクチャでも製品でもない。多要素認証などの製品を導入するたびにゼロトラストの一部が実装されるが、環境全体のセキュリティが保証されるわけではない。真のセキュリティは多層的なアプローチから始まる」。
- 技術的負債
「技術的負債」という言葉の定義は、IT部門の内外で人によって異なる。
後で修正することを前提に、品質より速度を優先して意図的に展開した不完全なコードを指す人もいれば人もいれば、レガシーシステムやその維持コストを指す人もいる。
Cybellis ConsultingのファウンダーでPenske MediaのIT担当VPを務めた経験を持つKaren Swift氏はこう言う。「理論上は先送りされた保守やアーキテクチャの近道の積み重なったコストを意味するが、実際には基幹システムへの慢性的な投資不足を隠す言葉として使われていることが多い。システムが時代遅れで脆弱だと正直に言う代わりに、『技術的負債』という言葉でごまかしているケースが多い」。
- イノベーション
長年使われてきた明確な意味を持つ言葉まで誤用されるようになった。「イノベーションは、説明責任やスケール、測定可能な成果への明確な道筋のない実験として語られることが多い」とSwift氏は言う。「特に『AIイノベーション』とすれば、AI関連のあらゆる活動を指す曖昧な言葉になっている」。
- 自動化(オートメーション)
Swift氏は「自動化」も同様だと指摘する。「スクリプティングやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を指す言葉として使われることが多いが、業務プロセス全体の見直しや、組織の変化への対応、継続的な効率改善まで考慮せずに導入されることが多い。ビジネスプロセスを見直さない自動化は、既存の非効率を加速させるだけだ」。
- ポスト量子コンピューティング
Sherwood氏は「post(ポスト、後の意味)」に引っかかりを感じるという。「『ポスト量子』という言葉は、まるでY2K(2000年問題)のように、ある日突然切り替わるイベントのように聞こえる。しかし実際には、量子コンピューティングの時代はじわじわと、気づかないうちにやってくる。いつ『ポスト量子』になったと言えるのか、誰にも定義できない」。
- 「ビジネス」(部門)
最後はバズワードとは少し異なるが、ITの自己認識と他部門からの見られ方に関わる言葉だ。
Smith氏はこう指摘する。「『ビジネス(部門)』という言葉を使って、テクノロジーとビジネスを別々の存在として扱う時代は終わった。ITをビジネス部門の『コンサルタント』と位置づける限り、本当のエンドユーザーへの貢献は遠のく。今やテクノロジーとビジネスは一体であり、切り離して考えることはリスクだ」。
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