シュナイダーエレクトリック、社員のキャリア開発にAIを活用

AIは、顧客体験の向上から業務プロセスの能率化まで、企業の様々な取り組みをサポートする実用的なテクノロジーとして本領を発揮しています。AIテクノロジーが労働者にもたらす長期の影響はまだ不明瞭ですが、フランスを拠点をするシュナイダーエレクトリックなど、社員のキャリア開発にAIを活用している企業もあります。

エネルギー設備とソリューションを提供するグローバル企業である同社は、2020年初頭にOpen Talent Market (OTM) プラットフォームを立ち上げ、社員がメンタリングの機会を見つけたり、スキルアップを図ったり、組織内のネットワークを拡大する手だてを提供しています。同プラットフォームは、AIを利用してユーザープラファイルをスキャンし、プロジェクトに適したスキルを組織内で特定したり、お互いに助け合える助言者と助言を受ける人をペアリングしたりします。また社員が社内で自身のスキルを売り込むこともできるようにしています。 

シュナイダーエレクトリックのシニアタレント開発パートナー、シャノン・ブース氏は、次のように語っています。「私が入社してまもなくの2019年後半に、米国オフィスのホールで初めてOTMがプレゼンされたのを覚えています。ただそこに座って、『これは私にとても役立ちそうだ』と考えていました。私は生来ネットワーキングがあまり得意ではないからです」

ブース氏は早期のリーダーシッププログラムを担当しており、自身のチームは、社員にOTMを紹介する理想的なタイミングは職務についてから6~18か月経った頃であることがわかったとと語っていました。その間に自身の仕事に慣れることができ、「その後、他にどのようなチャンスがあるかを見極め、このツールがキャリア開発にどのように役立つかを学ぶことができます」

このプラットフォームを活用するために、社員はまずプロファイルをセットアップして、自身のスキルやこれまでの経歴、将来の夢などを記した履歴書をLinkedInから直接アップロードします。また逆に、従業員は所属チームに不足しているスキルセットを把握し、他部門の社員が自分たちのプロジェクトに参加するチャンスについて投稿することもできます。

「提供する情報が多ければ多いほど、返ってくるものが多いのです」と氏は語り、このプラットフォームはAIを使って、社員にチャンスや関連職務またプロジェクトについての情報を提供し、キャリア開発をサポートするメンタリングを求める社員同士をマッチングしていると加えています。OTMはキャリア開発機能も備えており、社員は「可能性のあるキャリアパスを探索し、スキルアップのために短期の能力開発トラックを構築できる」と氏は述べています。

さらに重要なことに、プラットフォームのAIは、社員が性別や年齢、民族性にまつわる偏見なしに自身のキャリアパスを構築する助けをしています。

「私たちは社員に意義ある仕事を見つけてもらい、平等な機会を提供したいのです。お互いの様々な違いを認め合って全員が平等な機会とアクセスを持つ環境を構築し、キャリア促進に向けて大きな力を得たと感じてほしいのです。それらの達成は、最終的には人材定着率の向上につながります。それが当社の主な目標の1つなのです」と氏は述べています。

迅速にスキルギャップを埋める

OTMのもう一つの大きな利点は、シュナイダーエレクトリックは、臨時社員を雇用したり外部から募集することなく、社内のスキルギャップの解決に取り組むことができるということです。

例えば、同社の社員や外部顧客からの需要が高いソフトウェアアプリケーションを管理するフェリックス・ラモス氏は、小規模で予算に限りのある自身のチームに対し、OTMを使ってその能力向上を図りました。

「オープンタレントマーケットプレイスからのボランティアなしには、我々は全員(同社の社員と外部顧客)をサポートすることはできませんでした」とシュナイダーエレクトリックでエネルギー管理ソフトウェアのプログラムマネージャーを務めるラモス氏は述べています。

OTMボランティアの助けによってチームはその機能を「少なくとも1.5倍から2倍」は拡大することができたと氏は語ります。ボランティアにも等しくメリットがあり、そのボランティアの多くは「私たちのチームで積んだ経験をもとにキャリアコースを変更した」と述べています。

「ボランティア募集は容易に投稿できました。そして数時間で複数の候補者が応募してきたのです。大勢と面談したり、承認を得たり、マイルストーンを経たりすることなく候補者を採用できました」と氏は述べ、OTMの使用により、多様な応募者の募集や管理において多くの経験が積め、マネージャーとしてさらに力をつけることができたと付け加えています。

ソフトウェア製品管理のシニアダイレクターであるジェシカ・キッパー氏は、グローバルなホスピタリティクライアントのウェブサイト上でさらに優れたユーザーエクスペリエンスのオプションを紹介するにあたり、リソースが不足していることに気づきました。作業を迅速に進めたかったため、OTMに投稿してUXデザイナーを募集しました。

「他チームから来たUXデザイナーと共に、4週間にわたって週に4時間から8時間作業をしました。このUXデザイナーも、サステナビリティにさらに精通し、自身のスキルセットを向上し、ネットワークを拡大する興味深いプロジェクトに参加したいと考えていたのです。私のチームのデザイナーと連携し、成果物への問題とアプローチについて概説してくれました」とキッパー氏は述べています。

UKデザイナーはチームと話し合いを持って要件を特定してから、「3つのかなり異なったアプローチを作成し、ユーザーのコアニーズに応じて顧客が検討できる様々なオプションを、迅速に、しかも高忠実度のプロトタイプで提示しました」とキッパー氏は述べています。

OTMから採用したUXデザイナーは、キッパーチームのサポートで「主な成果物を作成してくれた」と氏は述べており、OTMなしにはこれほど効率的に生かせなかったチャンスを有効に活かすことができました。

AIとの繋がりを加速

特定のスキルセットを持つ社内の人材を活用することで、重要なプロジェクトにより情熱を傾けることもできます。OTMは、これらのトピックに関心を持つ人材、また適切なスキルを持つ人材を特定することで、新しい部署や役割で支援する機会をやる気のある社員につなげることができます。ラモス氏が指摘したように、人事が関与する必要がないため煩雑な手続きを排除することができます。マネージャーや一般社員が直接連絡を取り合い、チャンスを通してつながりを構築することができます。

シュナイダーエレクトリックの12万人を超える世界各地の社員が急速につながるようになったとブース氏は語っています。「ある意味では会社が縮小されたのでしょうが、さらに大きく広がったとも言えます」社員は自身のオフィスや勤務地域以外の同僚とつながりを築き、社内のつながりが地域だけでなくグローバルに広がっています。

また、OTMのメンタリング推奨によって、容易に関係を構築できるようになりました。指導者になることに関心がある社員は、システムを通してメンタリングに興味を示す社員とマッチングできます。プロファイルのボックスにチェック印を入れるだけで、あとはAIにまかせればよいのです。

「社員が何に関心を持っているか、どのような目標や野心を持っているかをもとにしてAIがマッチングし、メンタリングの機会を求めるユーザーには週に1回サマリーが届きます」と氏は述べています。AIは組織内で社員のキャリアを伸ばし、社全体でスキルギャップを埋める機会を24時間体制で特定するサポートをしています。人事の手を煩わせることはありません。

戦略プロジェクトサービスイノベーションチームのメンバーであるソフィー・ブラウズ氏は、社員側としては「OTMの利用には時間管理、優先付け、コミュニケーション、透明性、そして上司との優れた関係の構築が必要です」と述べています。

氏がOTMで取り組みたいプロジェクトを見つけた時は、週に何時間か、または月に何度か時間を作るようにしています。「そのプロジェクトに費やす時間がある場合は、カレンダーに予定を書き込み、自分が忙しいことをチームメンバーに知らせます。OTM [での仕事]から得られるスキルや知識、経験が、今の自分の仕事にどのような影響をもたらすか、また反映されるかを考えるようにと上司に言われたことがありました。私はOTMでの自分の作業、また私の現在の仕事との関りについて、時間を取って考えてみるようにしています」と述べています。

顧客体験プログラムマネージャーのローリー・べランド氏は、採用者と候補者の両方の立場からOTMを使用した経験があります。氏はOTMが、同様の目標を持つ同僚とのつながりや「個人的なネットワークを拡大し、社内の新しい分野に眼を向け、新たなスキルを身につけ、チームメンバーとの相性を試してみる「トライアル」の機会を提供してくれたと述べています。

「採用者としても候補者としても、新しいスキルを学びました。OTMは、圧倒されるようなグローバルな環境でつながりを構築するのに役立つすばらしいリソースです。毎日我社について新しいことを学んでいます。何年も働いてきた所属部門についてもです。一人で、あるいはマネージャーやメンターからのサポートを受けても、それをこなしていくのは大変なことがあります。プラットフォームの自動提案のような単純なものでも、これまで存在すら知らなかった新しいキャリアパスを紹介してくれることがあるのです」とべランド氏は述べています。

Artificial Intelligence, Careers, Staff Management


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Source: News

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